内容説明
反時代的とは何か。時代に背を向けているだけの冷淡な反対的態度ではなく、積極果敢な時代批判を通して未来を指向する精神。これがニーチェにおける最も美しい〈反時代的〉という意味である。ショーペンハウアーとヴァーグナーに反時代的人物の典型をみる若き日のニーチェの、厳しい自己追求のうちに展開される徹底的な近代文明批判の書。すべての青年たちに捧げられた青年の哲学。
目次
第1篇 ダーヴィト・シュトラウス、告白者と著述家
第2篇 生に対する歴史の利害について
第3篇 教育者としてのショーペンハウアー
第4篇 バイロイトにおけるリヒアルト・ヴァーグナー
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
hikarunoir
11
「セロトニン」の食前酒「ショーペンハウアーとともに」の為「意志と表象としての世界」と共に。以前爆笑した「食後のフルート」的テンションで逆の絶賛が横溢する。2019/08/08
shinano
11
やはりニーチェの著作は強敵である。歯が立たない、というか読解させない様に書いているのかと疑う。一文が長い上に、文章中に幾人かいて階級や構造などが出てきて、そういうものを「彼」と代名表記していくので、読み手(わたしです)が一体誰を「彼」といっているのかわからなくなってくる。抽象表現があまりにも多いので、ニーチェ自身の回答であってもその真意が読み取れない。比喩、これがまた、抽象表現を他に喩え修飾するので、困惑の穴に落とされて、その行の前2~3行をうおさおして、文章の穴から這い出すことに時間を使う。即再読だ。2010/11/28
shinano
9
ゆっくりじっくり時間をかけて読んできたがやはりまだまだ読み解けない。何を言っているのだろうと何度も立ち止って振り向く様に数行を読み返すことばかり。ニーチェ著作がたくさん含んでいる理知の栄養素を私は摂り入れられない頭の消化器官なのか。解からないでも読む、これは論語読みの論語知らず、ニーチェ読みのニーチェ知らずとなるのだろうか。ニーチェのどこか直観的な事象認識を、抽象表現や詩的な比喩が織り交ざった長文が幾つも続き、人称代名詞と指示代名詞が輻輳してくるので、文学的哲学書への抗体が自分には必要とわかった。2011/02/27
またの名
8
あちこちで広がる反知性主義に対抗する論陣を張るに至るまで知識人や学術誌が突き上げられ、不快な歴史は忘れようと唱える標語を見かけるのにも慣れた今日、生を賦活し現在や未来にこそ益する歴史や、大学の黴臭い教養からの解放を擁護するのはむしろ即時代的zeitgemäßに聞こえる。国家への奉仕と営利事業に哲学・教養が従属させられることを激しく罵倒したニーチェの本意がこんな時代に実現されてるとは到底考えられない以上、寛容や民主主義を貶すヘイトスピーチかとも思わせる文言を投げつけてくる哲学者に耳を傾ける意義は、まだある。2015/12/09
∃.狂茶党
4
ニーチェに対するイメージに合致する書物。 第一篇は、概ね罵倒で成り立ってます。 困ったことに、罵倒されてる人をよく知らないので、ニーチェの罵倒から、その人の考えを推測するほかありませんが、罵倒から人となりを捉えるには、情報が偏りすぎているので、よくわかりません。 ただニーチェは大変怒ってます。 ヴァーグナーに対する、ニーチェの思い入れが綴られた文章は、実際には、関係が悪化し始めた頃のもので、この辺の事情は、解説で綴られています。 何やら複雑な恋文のようです。2021/04/11