内容説明
文典文献学の徒として出発したニーチェの若き日の諸労作を集める。ニーチェの文献学研究は、学生時代、教師時代を通じ、十数年間の生活の中心をなしていた。彼にとって、ギリシア精神は、人間形成の典型であり、唯一の完成した芸術であった。このギリシア精神を再現するために、彼は芸術家の眼をもって文献学の諸問題に対決する。プラトンの対話篇研究、ラエルティオス・ディオゲネスの資料批判、ギリシア人の祭祀への考察―私たちは、ここに文献学の狭い限界を突き破ろうとする、若きニーチェの姿を認めることができるだろう。
目次
プラトン対話篇研究序説
ラエルティオス・ディオゲネスの資料
ラエルティオス・ディオゲネスの資料研究と批判への寄与
ギリシア人の祭祀
著者等紹介
ニーチェ,フリードリッヒ[ニーチェ,フリードリッヒ][Nietzsche,Friedrich]
1844年10月15日プロイセンのレッケン村で牧師の長男として生まれる。ボン、ライプチッヒ両大学で文献学を研究、のちバーゼル大学教授となる。ヴァーグナー夫妻やブルクハルトと親交。1900年8月25日死去。ヨーロッパ文化とキリスト教への徹底した懐疑と批判を出発点とし、神の死を宣告するとともに、永遠回帰による生の肯定の最高形式を説いた(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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hikarunoir
8
孤立に飽かせ、思想の「余禄と補遺」的意味で読む。結果現れたのはアポロン/ディオニュソス分類への移行に余りにスムーズな文献学職業人の姿と古への愛だった。2020/09/09
roughfractus02
4
文献学は従来のギリシア研究を覆すに留まらず批判となる。対話篇をアカデメイアでの弟子達との対話を想起する備忘録とする著者の説は対話篇がプラトンの青年期に書かれたとする従来の説を疑い、歴史上のソクラテスと対話篇のソクラテス=プラトンの影を分けてその弟子達もプラトンの弟子と見なす。自らを師に重ねるプラトンの生と政治性を前景化する著者の文献学は、さらに同時代のR・ボイルのアトム論をディオゲネスのそれと区別し、ギリシアの祭祀を同時代の合理的解釈から峻別して、歴史の真理が後に権力への意志と呼ぶものである点を示唆する。2017/08/01
いいほんさがそ@蔵書の再整理中【0.00%完了】
3
**ネタバレ**哲学ネタのSFの読解の為読了。ニーチェが元ネタのSFはあまりにも多い。その際、ニーチェ哲学用語である"アポローン(理性)的"、"ディオニューソス(感情・激情)的"を理解する上で本書は重要な足掛かりになります。また、周知の通りニーチェは発狂する最後を迎えるが、本書ではその兆候はあまり現れていない。そのため、狂気に苛まれつつ全身全霊で書き示された鋭い感性の警句は伺える事はできなかった。私個人の知識からしてプラトンについては多少知っておりましたので、プラトンについて書かれた部分が一番面白かった。2012/03/31
∃.狂茶党
2
ニーチェ、教師時代の論文、講義用ノートなど。学生を意識していることもあるのだろうが、思いの外読みやすい。文献学についての知識は特になかったが、校閲と似たようなものですね。本全集編纂翻訳の苦労と、ニーチェの情熱がダブったり。ミステリ的に読んだり、ある種の異世界ものとしても読める。ニーチェは学問には愛情が必要と学んだそうである。2018/05/21
代理
2
ニーチェによるプラトンの解説とギリシア文化の講義。プラトン解説は最高に楽しい。「現実を軽蔑するプラトン」というテーマがニーチェのなかで一貫してるのがわかる。宿しながら隠す神像という文化。非人間的なもののうちにこそ、身の毛もよだつような神聖性が宿ると信じた自体の彫刻たち。大木に頭しか彫ってない像は、『作れない』からそうしたのではなく、直接的に神を表現することを恐れたかららしい。ここらへんをニーチェは気に入ったのかもしれない。2015/04/30