内容説明
歴史と記憶のはざまに横たわるヴェトナム戦争。この戦争の経験はいったい何だったのか。どのような文化を生んだのか。1960年代のアメリカとヴェトナムの状況から現在の戦争評価まで、政治・軍事・文学・写真・建築などさまざまなジャンルに及びながら、ヴェトナム戦争のもたらした文化の変容を深く克明に描き出す画期的な「戦争の文化史」。
目次
戦争は9時から5時まで
アメリカン・グラフィティーズ
天使たちの丘のむこう
アメリカン・ウェイ・オヴ・ウォー
ヴェトナム・ミステリー・ツアー
ハーツ・アンド・マインズの喪失
心のなかの死んだ場所
鳥の眼に映る戦争
記念碑
想像力
闇のような緑
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
スミス市松
8
この戦争においてアメリカが投入した数々の概念は、濃緑の森林に吸い込まれ、木霊や残響となって飛び交い兵士たちの平衡感覚を麻痺させてしまった。ベトナム帰還兵をはじめ政治家や特派員、陸・海・空軍の兵士たち、または白人/黒人、反戦派/主戦派といった対立軸――ベトナム戦争における様々な世代の様々な立場の様々な思惑を随所に挿しはさむことによって、本書は彼らがいかにして無力感に囚われていったのか、更にはその無力感に囚われているにも拘らず、何故かくも血腥い狂気を、徹底的な破壊と殺戮を生み出したのかを明らかにしようとする。2013/09/22