内容説明
人間の無意識の世界から紡ぎだされた象徴的主題とそれを核にして形成された神話的なイメージや象徴的表現の分析による心の構造の探究。リビドを広義の人間的エネルギーと捉え、新しい地平を切り開いたユング心理学の記念碑。
目次
母から自由になるための戦い
犠牲
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
シルク
12
下巻。「私には、太陽からオ○ンチンが垂れ下がってるのが見える。そのオチ○チンが揺れる。そこから風が生まれるのんよ…」と、ある分裂病の患者さんが語ったという、その記述を読みたくて手にしたこの本。「○○は△△の象徴で□□の神話では☆☆で…」と、冗長に話が続く。なんか戸惑う本だよ、わたくしのような貧弱な頭しか持ってない者には。。。と思ってたが、この本を訳した方も「かつてこの本を前にして、立ちすくんじまったよ~」と語っていて、なんかホッとした(笑) しきりに、幼年期を「黄金色」と形容しているところが印象に残った。2023/03/29
roughfractus02
9
フロイトの熱力学的リビドーを、性的な個人的無意識から意識と無意識の統合である心全体に拡張した著者は、このエネルギーを人類共通とし、各民族で形を変えて神話形象になると捉える(ブルクハルト「ギリシャ人にとってのオイディプスはゲルマン人にとってのファウストである」)。この具象化過程(変容)は「個体発生は系統発生を繰り返す」というヘッケルの進化論をモデルとする。本書は母的な神話形象を元型の太母へと向ける。心的リビドーの退行を助け、集合的無意識を活性化させるその治療実践は、類比の連鎖によって象徴化した文自身が示す。2021/05/15
またの名
9
意識から自律して人間を魅了し影響する元型の働きにより、踊り手が毛皮等を衣装として被るように神話のイメージや観念を着て無意識のダイナミズムが表現される、と説くユング。その記述は患者の妄想、聖書の一節、詩の一節、物語の場面、様々な神話の場面、宗教的図像、自分の見解、学者の見解、神秘家のビジョン、諸言語の語源といった次元を異にする事柄を整理区別しないまま連結し、キリストと仏陀と天照とカントと物理学が混交した独自理論を述べる人のよう。そんなだけどワーグナー、ヘルダーリン、ニーチェらドイツ文化の解釈としては面白い。2018/06/26