出版社内容情報
地域で、大学で、学校で、家族で、個人で。第一人者による、最良の手引き。
沖縄で30年にわたって聞き取り調査をしてきた著者が、「他者の話を聞く」ことについてまとめた一冊。
「ひとりの人間の、人生の語り」が生活史です。この本は、生活史を聞いて原稿を書き、冊子にまとめて作品とするための手引きとして書かれています。生活史の美しさ・おもしろさから、そのむずかしさ・暴力性まで、これまでの考えをまとめた一冊です。
「この本では、生活史を聞いて書くうえでの、技術的なことを含めたさまざまなことが書かれていますが、本書はいわゆる「マニュアル本」ではありません。……聞き取りをめぐるさまざまなことを書いて、それをきっかけに、他者の話を聞くということについて考えてみたい。この本はそんな本です。」
【目次】
はじめに――生活史を聞いて、書く
作品としての生活史/誰にでもできること/たくさんの生活史/語りを残す
第一章 生活史とは何か
1 生活史とは
生活史からわかること/生活史のおもしろさ/人生、歴史、意味/広がる生活史
2 生活史の事例
第二章 語り手と出会う ―― 調査という「社会関係」
1 どうやって語り手と出会うか
2 トラウマを抱えた人びと、差別され排除された人びと
安易な理解/聞かないと残らない声/語りの搾取
3 構造的な聞きにくさ
調査の現実/社会的つながりの外へ
4 分断そのものを研究する
『地元を生きる』の調査/聞きやすい範囲
5 「聞き取り調査」ということ自体のわかりにくさ
もっとも聞きづらいひと/「普通」の人びとへの調査
6 分断を乗り越える
打越正行という希望/那覇のスナックで/時間をかけて関わる/当事者性とはなにか
7 関係性の網の目の中で
8 キーパーソン、リーダー、活動家
9 語り手と聞き手のジェンダーについて
中立の語りはない/語り手のジェンダー/聞き手のジェンダー/安心して語れる場をつくる
第三章 調査の進め方
1 調査のプロセスに入る
2 聞き取りの依頼とアポ取り
電話でのアポ取り/メールでの依頼/理解のされにくさ
3 インタビューの場所
カラオケボックスとラブホテル/意味をもつ場所
4 手土産
相手に合わせて選ぶ/手土産のもつ意味
5 名刺、同意書、「調査のお願い」
調査倫理/同意の意味
6 録音とメモ、ファイルの管理
カセットテープとがっちゃんこ/レコーダー類/参与観察/録音のタイミング/メモ/音環境/バックアップ
7 謝礼、お礼、聞き取りの後
謝礼とお礼/語り手との関係を続けるべきか
8 ゆっくり休む
第四章 語りの聞き方
1 積極的に受動的になる、あるいはピントを合わせない集中
話を聞くとはどういうことか/言葉の連鎖/積極的に受動的になる/ピントを合わせない集中
2 質問をする/しない
最初の質問/事実関係だけを聞かない/物語は生きている
3 「一般論」と生活史
一般論には一般
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