出版社内容情報
歴史を聞いて、残す。
大学から公民館まで、インタビューのそれぞれの実践例を通してノウハウを学べる一冊。
オーラル・ヒストリーと一言でいっても、実際の現場で行われている行為はさまざまだ。本書は、「話し手の口述によること」「共有可能にしようとしていること」「話し手が歴史的事実を語り残そうとしていること」の三点を実現するための具体的な手順を示したうえで、それぞれの実践における困難と実践を紹介する。聞き取りの初心者にも、経験者にもおすすめのガイドブックである。
【目次】
はじめに
第Ⅰ部 オーラル・ヒストリーの基本型を学ぶ
第1章 オーラル・ヒストリーとは何か 佐藤信+朴沙羅
オーラル・ヒストリーって?/いろいろなオーラル・ヒストリー/最大公約数としてのオーラル・ヒストリー/インタビューやヒアリングとなにがちがうの?/ヒアリングのすすめ、オーラル・ヒストリーのすすめ
第2章 オーラル・ヒストリーの基本動作 佐藤信+朴沙羅
1 企画する
話し手と出会う/出口を決める/チームをつくる/保管・保存・公開を見通して記録媒体を決める/金銭的な見通しをつける/話し手に依頼する/研究倫理に沿っているか確認する
2 準備する
場所と日程を押さえる/録音・録画機材を用意する/下調べをする/質問票をつくる
3 聞き取る
事前に/開始/聞き取り中/終了後
4 整理する
文字起こしする/先だって聞き手が確認する/話し手に確認してもらう/(文字起こしをしないで)音声を整理する
5 保管する
6 共有可能にする
公開(可能に)する/保存(可能に)する/冊子化する
7 解釈する
第Ⅱ部 オーラル・ヒストリーを実践する
第3章 市井の人に聞く 朴沙羅
1 はじめに――「市井の人に聞く」とは
市井の人とは誰か/この章の位置づけ
2 市井の人に聞く調査の歴史
欧米の伝記的研究の歩み/日本の伝記的研究の歩み
3 身近な人に聞く――具体的なステップと私自身の調査の振り返り
関心を持つ/下調べする/キーパーソンを見つける/インタビューの内容を分析する
4 周縁化された人々の話を聞く
聞き取れないこと――「私じゃなくてお父さんに聞いて」「何も覚えてないと思うで」/話されないこと――「言われへん」/こちらの理解と異なること――「差別なんかない」
5 おわりに――歴史は身近なところにある
第4章 地域に暮らすお年寄りに聞く 森亜紀子
1 地域に暮らすお年寄りとは?
2 過去の暮らしや体験を聞く調査の歴史
日本の場合/沖縄の場合
3 地域で過去の体験を聞くプロセス
自分の知らない世界と出合う/地域の拠点を見つけ、体験者を探す/お年寄りに過去の体験を聞く/「層の体験」を浮かび上がらせるには/記録を地域に還元し、社会に共有する
4 おわりに
第5章