出版社内容情報
「場面を描く、生活を書く」『タイミングの社会学』(紀伊國屋じんぶん大賞2024第2位)の著者、最新刊。エスノグラフィの息遣いを体感する入門書。
内容説明
生活を書く、それがエスノグラフィの特徴です。そして、もっとも良質なエスノグラフィの成果は、苦しみとともに生きる人びとが直面している世界を表し出すところに宿るものです。もともと人類学で発展したこの手法は、シカゴ学派を拠点に、社会学の分野でも広がっていきました。本書では、5つのキーワードに沿って、そのおもしろさを解説していきます。予備知識はいりません。ぜひ、その魅力を体感してください。
目次
第1章 エスノグラフィを体感する
第2章 フィールドに学ぶ
第3章 生活を書く
第4章 時間に参与する
第5章 対比的に読む
第6章 事例を通して説明する
著者等紹介
石岡丈昇[イシオカトモノリ]
1977年、岡山市生まれ。専門は社会学/身体文化論。日本大学文理学部社会学科教授。フィリピン・マニラを主な事例地として、社会学/身体文化論の研究をおこなう。著作に『タイミングの社会学―ディテールを書くエスノグラフィー』(青土社、2023年、紀伊國屋じんぶん大賞2024第2位)、『ローカルボクサーと貧困世界―マニラのボクシングジムにみる身体文化』(世界思想社、2012年、第12回日本社会学会奨励賞。2024年に増補新版)など(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
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- 評価
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
どんぐり
78
『ローカルボクサーと貧困世界』の著書をもつ社会学者が書いたエスノグラフィ入門書。エスノグラフィは、自分の日常とは異なった研究対象(特定集団)の中に入っていき、長期にわたって同じ時間を過ごしながらそこで営まれる生活を参与観察し、記録する研究方法である。その要点として、フィールドに学ぶこと、同じ時間を過ごすなかで生活を記していくこと、調査者は人びとと活動を共にし、事例をとおして説明すること、場面と主題をつなげて考察を深めることなどがあげられている。→2025/02/16
けんとまん1007
44
地域のことに関わるようになって以来、ますます、どのように状況を掴むのか、それを、どう考えるのか・・で、頭を悩ませている。エスノグラフィーという言葉は、最近まで知らんかった。机上ではなく、あくまで、その場に臨む。臨む姿勢も、難しいと思っていたが、この本のおかげで少し整理できたと思う。自分自身を、その場の一人として位置づけ、可能な限り、実践すること。そこから、日常の何気ないところを中心に眼を向けること。時間軸で考えること。2025/01/16
shikada
19
フィールドで中長期的に時間をともにし、生活を書くエスノグラフィの入門書。フィリピンのボクサー、アメリカで家を追われたシングルマザーなど豊富な具体例で、エスノグラフィの狙いと手法を解説している。読むにつれ興味がわいてきた。「誰に着目すべきか」が分からずにいたけど、最後で「困難を生きる人びと」という1つの指針を示してくれた。「困難を押しつける社会状況に対しての鋭い観察眼を鍛え上げ」ている人びとの生活を書く。短い時間でスッキリする成果物が求められる傾向がある現代で大事な考え方だし自分でもやってみたいと思った2024/11/24
タナカとダイアローグ
16
人類学、参与観察に関心があるかつ、ノリに乗っている(ように見受ける)編集者・柴山浩紀さんというところから。エスノグラフィーが描きたいものとはどういうものか、質的研究・量的研究・古典など先行研究の考え方、行くんじゃなくて通うこと、その往復が重要っていう視座をうけとった。外部の観察者では理解できないことを記述する試み、ビジネス界隈で注目されている理由がわかる。独特の関係を理解することができるようになったら、どこが詰まってるか分かってなんとかなるような気がしている。構築人類学(松村圭一郎さん)の第一歩2024/10/23
武井 康則
11
「はじめに」を何気なく読み始めたらぐいぐい引き込まれた。社会学のフィールドワーク、エスノグラフィの紹介なのだが、その地に行って一緒に生活し記録する、そんな学問の可能性、面白さ、必要性を平易な言葉で説き、決して大げさな表現や新奇な出来事を語るわけではないが、後に続く者を作りたいそんな著者の熱意が静かに伝わってくる。高校入試に使えそうな品のある文章で、国語の教科書にも最適。ドラマをルポするのでなく、我慢強く時には何年も対象に寄り添って目の前の事実を記録し続ける。そんな職人を思わせる読んでるだけで心地良い文章。2024/10/11