出版社内容情報
クィア理論って何? ドラァグ論ってどこから来たの? パフォーマティブってつまりどういうこと? 『ジェンダー・トラブル』がはじめてわかる!
内容説明
現代のジェンダーとセクシュアリティ研究の方向性を決定づけたとされるジュディス・バトラーの主著『ジェンダー・トラブル』は、その難解さでも名高い。実は、バトラーの理論を理解する鍵は、当時のフェミニストやセクシュアル・マイノリティが置かれていた現場―社会と歴史と思想の文脈にある。クィア理論って何?ブッチ/フェムやドラァグ論はどこから来たの?パフォーマティブってつまりどういうこと?バトラーの主著『ジェンダー・トラブル』を時代ごと理解する。
目次
プロローグ―『ジェンダー・トラブル』非公式ファンブック
第1章 ブレイブ・ニュートン!
第2章 ジェンダーに「本物」も「偽物」もない!
第3章 “You make me feel like a natural woman”
第4章 「ジェンダーをなくすんじゃなくて増やそう」って話
第5章 「私たち」って誰!?
第6章 「クィア理論って何?」
エピローグ―“トラブル”の共鳴
著者等紹介
藤高和輝[フジタカカズキ]
1986年、大阪市出身。大阪大学大学院人間科学研究科博士後期課程修了。同科助教を経て、京都産業大学文化学部准教授。専門は現代思想、フェミニズム、クィア理論、トランスジェンダー研究(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
かふ
20
藤高和輝という人が『ジェンダー・トラブル』を抱えた人だと思えるから書ける本であって(実際にクィアと呼ばれる人かも)、アカデミーでバトラーを学んだというのではなく、経験から来るような文体(一般に言うオネエ言葉)で彩られており、それはバトラーよりもバトラーが『ジェンダー・トラブル』で対象とした人であるエスター・ニュートンへの眼差しが愛の本としての『ジェンダー・トラブル』があるというような(それはアカデミーの論文じゃなく、大まかに言ってバトラー『トランス・ジェンダー』の解説書なのだ2025/06/10
msykst
17
『ジェンダー・トラブル』に焦点化し、「(刊行)当時のフェミニストやセクシャル・マイノリティが置かれていた社会的、歴史的、思想的な文脈」(P13)を丁寧になぞりながら内容を解説する。当時の社会運動の中で発生した問題や突き当たった限界を示しつつ、バトラーがいかにそれを乗り越え、拡張したか論じられる。読者に寄り添おうとする言葉が節々に溢れているのだけど、加えて、『ジェンダー・トラブル』刻み込まれた「フェミニスト的記憶」(P258)を敬意を持って丁寧に描き出す事も企図されているように思う。2024/07/12
Ex libris 毒餃子
16
『ジェンダー・トラブル』の副読本かつフェミニズム思想史。作中では女性の同性愛者ですらも男性性と女性性の思考パターンになり、性行為に不具合が生じるのがトラブルのように感じました(タチとネコ、受けと攻めが役割的に発生する)。ジェンダーの自認性が社会から強制されているのがこういった極めて私秘的な事象に及ぶにあたり脱構築が必要なのかもしれません。2024/07/22
Bevel
13
入門というよりか到達点と感じた。哲学とそれに抵抗する当時の文脈についての議論の葛藤的な解釈を経て、フェミニズムの系譜学が必要だというところに達して、実際に『ジェンダー・トラブル』に関してそれをやってみたという感じ。『ジェンダー・トラブル』の解説として最も欲しかったものが詰まっている。文章が読めるようになるという感覚があるし、それぞれがもっと追求したい課題も明確になると思う。もしカルチャーとしてバトラーが広がるとするなら、この著作を契機にもっと言及されてほしいなと思う。2024/07/15
ラウリスタ~
11
バトラー『ジェンダー・トラブル』の入門書。西洋白人男性による哲学史にそれを位置付けるのではなく、同時代のフェミニズム、レズビアニズムの実践のなかに配置する(バトラーの著作は必ずしも独創的ではなく、その前後の運動の流れの中にある)。ブッチ、フェムというレズビアンにおける能動、受動的役割が、異性愛における男性・女性の役割を模倣したものであるのかという問題から発する。インターセクショナリティは、人種差別廃止(黒人男性を工場で雇用)、女性差別廃止(白人女性を事務で雇用)といった個別の差別解消の交差点にある不可視者2025/04/25