出版社内容情報
文字、木簡などの記録メディア、年号などの興りとは。古代中国人の歴史記述への執念、歴史観の萌芽。それらが司馬遷『史記』へと結実する。歴史の誕生をたどる。
内容説明
現代にも通じる歴史書と評価される司馬遷『史記』だが、執筆には、それより前に記録され、伝えられたものの蓄積がある。当然のことながら、文字がなくてはならないし、竹簡などの記録メディアが必要。さらに、それがいつの出来事かを記述するためには、国王の治世や暦等を根拠にした年号もあるほうがいい。正史は権力者の歴史認識と思想を汲むため編者は命懸けだが、すでに古代中国においても過去の事象からいまの問題を見出す態度の萌芽が見られる。出土史料を繙きながら、『史記』に結実する記録への執念や歴史観の興りをたどる。
目次
序章 記録のはじまり―殷代
第1部 歴史認識(同時代史料から見る―西周~春秋時代1;後代の文献から見る―西周~春秋時代2)
第2部 歴史書と歴史観(歴史書と歴史観の登場―戦国時代;そして『史記』へ―秦~前漢時代)
終章 大事紀年から年号へ
著者等紹介
佐藤信弥[サトウシンヤ]
1976年兵庫県生まれ。関西学院大学大学院文学研究科博士課程後期課程単位取得満期退学、関西学院大学博士(歴史学)、専攻は中国殷周史。立命館大学白川静記念東洋文字文化研究所客員研究員および大阪公立大学客員研究員(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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へくとぱすかる
50
歴史書は単にできごとを記録するだけでなく、事象をどう捉えるかという著者・編者の見方が込められる。長らく伝世資料に依存して研究されてきた古代史も、考古学の進展にともない、出土資料によって修正されていく。それが現在では、まるで写真のフィルターをかけかえるほどの感触の違いを感じる。イメージの変身である。著者は出土資料とはいえ歴史的真実ではなく、当時の歴史認識・歴史観を表すものだと指摘している。祖先が王に封建されたと言っても、当時そういう建前で国を成立させていたことを記録したということ。注意すべき点だと思う。2024/01/16
よっち
32
現代にも通じる歴史書と評価される司馬遷『史記』の執筆には、記録され伝えられた蓄積があった。出土史料を繙きながら、記録への執念や歴史観の興りをたどる一冊。甲骨文字や記す竹簡などの記録メディア、国王の治世や暦等を根拠にした年号の成立。権力者の歴史認識と思想を汲む編者の存在も取り上げながら、西周から春秋戦国時代を同時代資料から見た金文、後代の文献としての詩経や史記、諸子百家が生まれた戦国時代の説話から語られる歴史、そして統一国家成立から焚書と紙の誕生から史記の編纂に繋がっていったのかなかなか興味深かったですね。2024/02/06
電羊齋
13
甲骨文、金文、竹簡など出土文献、ならびに伝世文献から探る古代中国における歴史認識と歴史観の様相が興味深い。本書では、歴史認識と歴史観の時代と立場による変化を例に挙げ、歴史と(それを記録し、解釈し、記述する)人間は常に変化し、動いているということが示されている。さらにそこから現在の政治や社会に対する問題意識から過去の事象を議論する、あるいは過去の事象から現在の問題を見出す意識の萌芽を見いだしている。このあたりは著者も引用するE・H・カー『歴史とは何か』での指摘と相通じていて、非常に面白かった。2024/01/22
赤白黒
6
甲骨文に始まり『史記』に結実する、中国における歴史書編纂の起こりを辿ったもの。西周史の専門家の著作だけあって、先秦時代の主要な伝世文献や出土史料の詳しい解説は非常に読み応えがある(他方、『史記』についてはほぼ先行研究の引用にとどまる)。西周金文の時点で既に作成者の「歴史認識」を表明する二次史料の側面があることに驚いた。中国における記録へのこだわりは、かくも分厚い伝統に裏打ちされているのだ。終章では年号の起こりについて触れられており、今なお年号を奉ずる日本人としては知っておきたいところ。2025/02/21
眉毛ごもら
5
史記に至るまでの中国の歴史書について。春秋やら戦国策や史記真面目読みたいなぁ、という気持ちとお前そもそも論語すらガッツリ読んどらんではないかという気持ちがせめぎ合う。とりあえずちくまの史記は探してみようかな…。史記とかに記載されてるのが甲骨文字として発掘や発見されるのすごい。微妙に内容が違うのを類推したり。まだ未解読の物もたくさんあるようなので今後が楽しみであるがタイムマシン欲しいなぁ。失われた書物が現役だった時代に行って読みたいなぁというのは歴史好き(文献重視派)の永遠の夢ではなかろうかと思った次第。2024/04/13