出版社内容情報
史上最大の水爆実験から最悪の原発事故、原発大国ウクライナの背景まで。危険や不安を孕みながら推し進められたソ連の原子力計画の実態に迫る、かつてない通史。
内容説明
第二次世界大戦後、大規模な軍拡競争を伴う東西冷戦下のソ連において推進された原子力政策は、人類史をどう変えたのか。最初期の放射線研究、史上最大の水爆実験から、世界初の原子力発電所稼働、東側同盟国への技術提供、原子力ビジネス、そして史上最悪のチェルノブイリ原発事故に至るまで。危険や困惑を深めながらも試行錯誤を重ね、科学者・技術者を総動員して推し進められた知られざる数々のプロジェクト。現代ロシアの基礎をなすその計画の全貌に迫る、はじめての通史。
目次
第1章 核兵器開発の発端―冷戦の勃発
第2章 核兵器体系の構築―ウラン資源開発・ミサイル・原子力潜水艦
第3章 放射能の影―米ソ“サイエンス・ウォー”の帰結
第4章 ソ連版“平和のための原子”
第5章 原子力発電の夢―経済停滞とエネルギー危機のなかで
第6章 東側の原子力―“同盟”諸国とエネルギー政策
第7章 ビジネス化する原子力―ソ連解体後
著者等紹介
市川浩[イチカワヒロシ]
1957年京都市生まれ。専門は科学技術史。現在、広島大学総合科学部教授。博士(商学)。大阪外国語大学ロシア語学科卒業、大阪市立大学大学院経営学研究科後期博士課程修了(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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まーくん
87
秘密のベールに包まれていたソ連の核開発の歴史についてソ連(ロシア)の文献を引用し述べている。スターリンはマンハッタン計画についてスパイ情報を得ていたことは良く知られているが、米国の核独占に脅威を感じ体制の危機さえ案じ、核開発を急がせた。諜報活動の成果は開発に直接役立つものではなく、複雑な計算・実験は独自に取り組まなければならなかった。(但し、完成できる道筋を知ることは大きい)米国に遅れること4年、1949年、ソ連は原爆を完成させ、水爆も同様に後を追った。冷戦は厳しさを増し、核軍拡に拍車がかかる。⇒2023/03/04
skunk_c
67
ソ連時代の核開発を核爆弾とその製造用原子炉、原子力潜水艦、そして原子力発電から核融合までを概説する。端々に見えてくるのが、従事する労働者の被曝をいとわない乱暴な開発姿勢で、その被曝線量たるや驚くべき数字が上がっている。また核爆弾を発破代わりに使うとかの信じられない話も。また、アメリカに対抗するため、かなり強引な開発が進められた様子が分かるが、その中でも批判的学者がいたり、特にスリーマイル後には原子力反対運動も起こっていたなどの話もあって、イメージしていたのとはちょっと違う面も。ソ連崩壊後の続編を期待。2022/12/12
榊原 香織
66
チェルノブイリ原発事故にもかかわらず、ウクライナて原発大国なんですね(電力の55%) 1980年代のソ連、”余剰核爆弾を発破代わりに利用する平和=産業目的の地下核爆発が100回以上実施”恐ろし~、平和利用てなに~2023/02/09
Ex libris 毒餃子
13
ソ連の核開発史を網羅できる本。天然資源が多いイメージだったが、コスト面で原発が開発される経緯が分かってよかった。2022/11/13
ジュンジュン
10
ソ連における核開発は、ソ連がその時々に直面した課題によって左右されてきた。故に、その歴史を追いかけることは戦後ソ連の、延いては冷戦の歩みを見つめるに等しい。そして、その流れはプーチンのロシアにまで続いている。意外にも、原子力の平和利用・原発第一号はソ連。理由がまた”っぽい”。原子力潜水艦の推進エンジン用に開発されながら、その目的を果たさなかった「AM装置」。その開発当事者達は自分達の失敗を糊塗する為、開発目的を平和利用へと素早く方針転換した結果だという。2023/05/23