出版社内容情報
新たな思想や価値観、生活スタイルや芸術文化が生まれた大正時代。百花繚乱ともいえるこの時代の文化を、最新研究の視点から第一級の執筆陣24名が描き出す。
内容説明
大正時代の日本は、さまざまな外来の文物を貪欲に受け入れ、豊かな社会の到来もあって新たな思想や価値観、生活スタイルや芸術文化を生み出した。労働運動がさかんになり、デモクラシーへの要求が強まるとともにナショナリズムも勃興する。教養主義が成立し、女性の地位が変わり始めるなか、大衆社会化によって多様な消費文化が生まれていった。百花繚乱ともいえるこの時代の文化を、二五人の研究者による最新成果を結集して、イデオロギーにとらわれることなく、正確に描き出す。
目次
吉野作造と民本主義
経済メディアと経済論壇の発達
上杉愼吉と国家主義
大正教養主義―その成立と展開
西田幾多郎と京都学派
「漱石神話」の形成
「男性性」のゆらぎ―近松秋江、久米正雄
宮沢賢治―生成し、変容しつづける人
北原白秋と詩人たち
鈴木三重吉・『赤い鳥』と童心主義〔ほか〕
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
fseigojp
10
いま、普通に思っている選挙権とか高等教育などが大衆化した時代で、日露戦争後(明治39年以後)からを想定する必要がある、そうすると実質は20年となる 2022/10/27
kenitirokikuti
6
図書館にて。 『昭和史講義【戦前文化人篇】』の続編のような内容。明治半ばまでの立身出世、富国強兵が成ったのちのエリート修養主義、大正にかけて旧制高校増加も背景にして教養主義(人格の完成)の進展、しかしトレンドはすぐマルクス主義に。高学歴教養・マルクスと並行して通俗文芸(現代もの)・大衆文芸(初期は新講談/時代(劇)小説を「大衆」文芸と呼んだ)・映画の時代劇の広がり▲「教養」「大衆(たいしゅう)」は新用法であり、教養は教育と同義、「大衆(だいしゅ)」は仏教語で僧侶の集団を指した。2021/12/19
つじー
1
大正の文化は現代に脈々と繋がっている実感が持ちやすく、近代史を知るおもしろさがつまっている。僕が興味もったテーマは「漱石神話」「民謡」「女子学生服」「小林一三」「カフェと女給」かな。どれも固定観念をひっくり返してくれる。筒井さんが「日本の教養主義は権威主義的偶像崇拝傾向」と書いていて、うわあ今も全然変わらねえってなるし、「教養への懐疑は潮の満ち引きみたいなもので定期的に現れるんやで」とも書いてて、歴史学ぶってこういうことよなと思った。2023/02/28
okimine_yuiki
1
弟が急に近松秋江と久米正雄について聞いてきたので「小谷野敦さんの文を読んだの?」と尋ねたらBINGO。本業は文学とは無関係で私小説の概念を知ってるかも怪しい弟に、いきなり破船事件はハード過ぎでは? 秋江の方は興味深げだったけど正雄には不快感が勝っていたようだ。仕方ないけど。ただ久米の読者層は女性と書いてあるので、ホモソーシャルが特定の女性をぶっ叩いたのはバレてないのでセーフ。でも芸者に入れ込む秋江は面白がってた。私も秋江の方は好きだ。全体としては「はじめに」が面白かった。何故日本が太平洋戦争に突き進んだの2022/02/16
Lieu
1
民本主義や京都学派から宝塚、カフェーまで、大正文化研究の総決算である。こういう新書はこれまでありそうでなかった。各専門家による分担執筆が功を奏している。「明治文化」「昭和文化」は一冊にまとめられないが、15年間の「大正文化」は何とか一冊にまとまる。出版や映画など、現代文化の基礎が大正時代に築かれたことがわかる本だ。2021/08/18