出版社内容情報
大伴氏、物部氏、蘇我氏、藤原氏から源氏、平氏、奥州藤原氏まで――各時期に活躍した代表的氏族の展開を、最新研究から見通し、古代社会の実情を明らかにする。
内容説明
古代日本をつくった氏族は、いつ歴史の舞台に登場し、その後どのように歩んだのか。大伴氏、物部氏、蘇我氏、阿倍氏から、藤原氏、橘氏、佐伯氏、紀氏、東漢氏、西文氏、菅原氏、源氏、平氏、そして奥州藤原氏に至るまで―各時期に活躍した代表的氏族を取り上げるとともに、通時的な歴史の展開をも見通したい。単に各氏族の事典的な解説にとどまらず、最新の研究状況を紹介しながら、時代背景としての古代社会の姿を明らかにしていく。ハンディながら古代史像を刷新する一書。
目次
大伴氏(伴氏)
物部氏
蘇我氏
阿倍氏
藤原氏(鎌足~奈良時代)
橘氏
佐伯氏
紀氏
東漢氏と西文氏
菅原氏(土師氏)
藤原北家
摂関時代の藤原氏(九条流・小野宮流)
源氏
平氏
奥州藤原氏
著者等紹介
佐藤信[サトウマコト]
1952年生まれ。東京大学名誉教授。横浜市歴史博物館館長、くまもと文学・歴史館館長。東京大学大学院人文科学研究科博士課程中退。博士(文学)(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
巨峰
49
興味深く読みました。日本もある時期まで血統や氏を重視し、素性が明らかでなければ政治的に上にいけない社会が脈々と続いていたのでしょう。それが崩れるのは織豊時代。偽平氏の織田氏が天下を取りかけ、父もよくわからない豊臣秀吉が関白になりあがったあたりでしょう。2022/03/18
ホークス
42
2021年刊。藤原氏一人勝ちの古代、他の氏族は衰えながらどう生きたか。祖先や事績も交えた論考集。天皇の喪葬を司る土師(はじ)氏は、文字通り埴輪も造っていた。造墓の仕事が減ったため菅原氏や大江氏に改姓する。桓武天皇との関わりが興味深い。阿倍仲麻呂の阿部氏、安倍晴明の安倍氏、奥州の安倍氏は同じ系統らしい。佐伯は「叫ぶ」が語源で、西国に移住させた蝦夷を各地で支配したのが佐伯部、それを都で統括したのが佐伯氏と言う。紀貫之などの紀氏は和歌山の大族。地元の系統は日前神宮の宮司家として続き現在81代目。これには驚いた。2023/02/03
terve
36
古代氏族研究は、新資料が発見されない限りなかなか進展しない。雄山閣の古代氏族研究叢書がなかなか続刊されないのはその証左である。この本はハンディとはいえ、なかなか読み応えがある。しかし、藤原氏に稿を割きすぎであると感じる。上毛野氏、賀茂氏、秦氏、葛城氏、平群氏など有名氏族はまだまだあるように思う。とはいえ、今までの古代史講義とは毛並みの違う内容であるように感じるのはネタ切れだからなのだろうか。2022/01/20
六点
22
古代史に於ける論点を、最新の研究の視点から、短節に纏め、読書子に届けるこのシリーズ。今回は「氏族」についてです。大伴氏や物部氏から始まり奥州藤原氏まで、古代史を彩った集団について、小説的ロマンを破壊し、等身大の氏族の姿を見せてくれます。古代豪族のしぶとさや、息の長さ。賜姓源氏や平氏の生存の努力、時代とともに変幻自在の姿を見せる藤原氏。辺境に生きる逞しさを見せる前九年・後三年関係氏族。何れも、史料の中から生き生きとした姿を現します。歴史学や考古学等の本当の面白さを学べる良い道標になると感じます。2021/09/03
chang_ume
15
古代氏族のミニ辞典といった構成でシリーズ中でもやや毛色が異なる。平安期に下国級の受領として細々と生き残る大伴氏、複姓氏族が構成する大集団としての氏族像が垣間見える物部氏、桓武天皇との個別関係を通じて土師氏からの改姓を図った菅原氏、各代ごとに継承が波乱含みで中央貴族との関係が意外に強い奥州藤原氏など。平安期以降に貴族化できず官人化する古代氏族のすがたが心に残った反面、読んでいてちょっと理解が断片的になりがちな印象。氏族ごとに章立てではなく、テーマをもっと読ませた方が良いのではと思った。2021/07/04