出版社内容情報
なぜいま中国政府は内モンゴルで中国語を押しつけようとしているのか。民族地政学という新視点から、モンゴル人の歴史上の問題を読み解き現在の紛争を解説する。
内容説明
二〇二〇年夏、中国政府は内モンゴルの公教育からモンゴル語を排し、中国語を母語として押しつける決定を下した。なぜ中国は民族同化政策を採ろうとするのか。それを理解するにはユーラシア史の中でモンゴルを見る地政学的視点が必要だ。遊牧民の世界、チンギス・ハーンのモンゴル時代、イスラームとの関係、近代国家形成・民族自決問題、日本による植民地化、ソ連・中国による分断などのモンゴルの歴史の要所を明快に解説。そこから現在の内モンゴルにおける紛争の深層を照射する。
目次
第1章 民族地政学
第2章 分断政治の人生
第3章 諸民族と中国の紛争
第4章 言語の民族問題
第5章 民族の国際問題
第6章 中央ユーラシア民族地政学の現在
第7章 日本の幻想
著者等紹介
楊海英[ヨウカイエイ]
1964年南モンゴル・オルドス高原生まれ。静岡大学人文社会科学部教授。北京第二外国語学院大学日本語学科卒業。専攻は文化人類学。博士(文学)。著書『墓標なき草原―内モンゴルにおける文化大革命・虐殺の記録』(岩波書店・司馬遼太郎賞受賞)など多数(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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skunk_c
65
再読。新疆ウイグルで行われているウイグル人に対する苛烈な民族・宗教性の否定・抹殺に匹敵することが、内モンゴルで行われていること、またステップに自然の摂理を理解せずに農耕を持ち込んで砂漠化していることを、自らの故郷を思う気持ちをたっぷりと込めて書いている。モンゴル人とトルコ系中央アジアの人々が長く活躍していたことを、現代の中国は全く無視をして、中国内に住む彼らを「少数民族」とし、さらにその民族を消去するかの政策は、一方での「一帯一路」の「一帯」政策に悪影響を与えるのではと思うが、現中国は意に介さない模様。2024/10/30
skunk_c
51
地政学に民族概念を組み込んだ「民族地政学」という方法が、必ずしもしっくりは来ていないが、モンゴル人である著者が、「モンゴルから見た歴史や政治・外交」という一貫した切り口で、2020年の内モンゴルにおける中国語の強制から、1949年より続く内モンゴルのおかれた状況を告発する。さらにモンゴルとウイグルやチベットといった中央アジアの繋がりを重視する視点は、今まであまり意識することがなかったので極めて新鮮だ。同意しかねる見解もいくつもあったが、著者のモンゴル人としての強いアイデンティティにぐいぐい引き込まれた。2021/01/24
巨峰
49
モンゴルの人たちの話は歴史小説でよく見かける。その頃は、部族に分かれていて中華国家に協力する部族と独自の道を進む部族。ハーンがでで、各部族を統合していく。今日のモンゴルは、ソ連と中共の支配のため、大きく3つに分断され、特に内モンゴルが中共の同化政策のため苦しんでいることが、内モンゴル出身の筆者により明かされる。こんにちの分断をモンゴルにもたらしたのが密約であるヤルタ協定に発したことに驚きがあった。東アジア中央アジアでは戦後はまだまだ続いている。現在日本人が知るべき事実、読むべき本だとおもう2022/03/20
nagoyan
14
優。著者の言う「民族地政学」が今一つわからなかったが、ユーラシア大陸を東西に結ぶ草原地帯(ベルト)に固有の遊牧民の論理と文明があり、それは「中国」とは異質なものであるという著者の主張は了解できる。長城以北の内モンゴルは漢民族(中国)の支配に属したことはなく、モンゴルを中国の少数民族、中華民族の部分とみることは文化的ジェノサイドだという。著者のいう日本の植民地責任は、旧宗主国として植民地(「満蒙」)であった内モンゴルの現状に心を寄せろというもので、これはそういう考えもありうるのかとやや新鮮に感じた。2021/01/20
ののまる
10
満州国や日本の進出と関係が深いのに、なかなか知られていない南モンゴル(内モンゴル)の歴史や今。そもそも満州開拓団とかをしっかり習わないものね…。楊先生の文章、あちこちに飛んでいったり、章を跨いで話が重複したり、事実を述べているところに自分の意見が混ざったりするので、ちょっと読みづらくいつも苦労する…2021/12/03
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