出版社内容情報
日本の村の近代化の起源は、秀吉による村の再編にあった。戦国末期、江戸時代、明治時代を通じての村の近代化の過程を、従来の歴史学とは全く異なる視点で描く。
内容説明
かつて村は「人間の集団」を意味する言葉であった。それが現在のように「土地」を意味する言葉に変わったのは明治半ばのことである。だが、その転換の起源は、秀吉の天下統一構想にまでさかのぼり、さらにその背景には地球上の土地を分割し囲い込もうとするような世界史的な転換があった。この間に起こった都市化・新田開発・分散知行、さらに廃藩置県・地租改正・地押調査から「明治の大合併」まで、村をめぐる土地と人の支配の紆余曲折を概観しつつ近代化の意味を再考する。
目次
序章 村概念の転換
第1章 村の近代化構想―織豊政権期
第2章 村の変貌と多様化―幕藩体制期
第3章 村の復権構想とその挫折―明治初期
第4章 土地・人・民富の囲い込みと新たな村の誕生―明治中期
終章 「容器」としての村
著者等紹介
荒木田岳[アラキダタケル]
1969年生まれ。福島大学行政政策学類准教授。地方制度・地方行政専攻。茨城大学人文学部卒業。新潟大学大学院法学研究科修士課程修了。一橋大学大学院社会学研究科博士課程修了。一橋大学社会学部助手を経て2000年から現職(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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パトラッシュ
129
同じ言葉で表現されていても、過去と現在では全くの別物なのは珍しくない。日本人が慣れ親しんでいる「村」も最初は人間の集団を意味していたが、秀吉は太閤検地において領知権と所有権を分離して大名鉢植え化の基礎にしようとした。しかし江戸時代に新田開発と都市膨張で飛び地が珍しくなくなると、村を行政の末端単位にしようと考えた明治政府は、所有地不明の土地をあぶり出すため秀吉構想を事実上復活する形で再編を進めたのだ。そうして成立した村を、現代人は自然に成立したと思い込んでいる。秀吉の政治的先見性と有能さを再認識させられる。2024/08/08
てつ
34
新書サイズで読むのがもったいない良書。分量を圧縮せざるを得なかったのか、説明不足もあるのが残念。 人と土地を支配するために区域を設定することの難しさを政治的に、かつ、民俗学的に分析している。再読確実です。2022/08/29
浅香山三郎
13
村の概念は中世までは、人間の集団を意味してゐたが、秀吉政権は土地による領域的なカタマリを村として把握しやうとした。しかし、飛び地や都市化など、年貢の収取単位としての村は、実態とはかけ離れてゆく。本書では、「天下統一」を大航海時代の世界情勢に対する対応として、検地や村切りを捉へ、実態との合致を目指す長い過程を整理する。第3・4章を近代の行政機関としての村への歩みに充てるが、近世の流れ(実態からの乖離の進行)を述べた第2章は多様な村の形態に触れて興味深い。2022/10/28
穀雨
9
いわゆる明治の大合併以前の村境について調べてもなかなか情報がなく、不思議に思った経験があるが、そもそも当時の村は大地に浮かぶ島のようなもので、その境すらはっきりしていなかったという。そうした前近代の村が、明治時代にいかに変貌したかがテーマ。論文がもとなので若干難しく、また明治中期で終わっているので「近代史」というには中途半端だが、とても興味深い指摘が所々にみられる。地理好きにおすすめ。2022/09/03
keint
8
村の近代化や性質について、豊臣政権期から江戸幕府、明治政府の権力側からの視点でどのように形成されたかを迫っている。 当たり前と考えている村をシステム化する過程での検地や度量衡の違い、飛び地およびその整理などの問題があったことを知れた。2021/12/18