出版社内容情報
人は死への恐怖に直面して初めて根源的に懐疑するようになる。哲学者が自らガンを患った経験を通じて、生と死、人間存在や社会のあり方について深く問いなおす。
内容説明
批評家ソンタグはこう言っていた。人は「健康な人の国」と「病気の人の国」のいずれかに属する、と。本書は哲学者自身がガンになった経験を通じて、「病気の人の国」の現実を見つめ、生と死について考察した記録である。死への恐怖はなぜ起きるのか。死に直面することでなぜ人は初めて根本的に懐疑し、真に思考するようになるのか。東西の哲学者たちによる病や死、老いについての考察も参照しつつ、「健康な人の国」の人々には見えない世界と人生の諸問題について深く問いなおす。
目次
プロローグ
第1章 がんとの遭遇
第2章 死
第3章 いかにして歳をとるか
第4章 がんという「病気」
第5章 がん病棟にて
第6章 助けを求めて
第7章 生と命
第8章 老いについて
エピローグ
著者等紹介
船木亨[フナキトオル]
1952年東京都生まれ。東京大博士(文学)。東京大学大学院人文科学研究科(倫理学専攻)博士課程修了。専修大学文学部哲学科教授。専攻はフランス現代哲学(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
あび
14
死に直面した時、初めて生を意識する。これまで当たり前のように続いてきた自分の命の重さを感じる。病におかされ蝕まれていく生への執着が強くなる。自問自答を繰り返し、これまでよく生きてきたかどうかを考える。そしてまた、これからなにをしてどのように残りの人生を過ごすかに慎重になる。死が迫れば、人は皆、哲学者となる。2020/10/01
ケニオミ
10
本書を読んでの感想です。健康でいる間は、自分が未来永劫生きるのではという考えを、心のどこかにもっていますね。しかし、死病に罹ると、それが単なる幻想にすぎず、今まで健康に感謝しきれていなかったことに思い当たります。そして、残された時間に何をするべきかを考えざるを得なくなります。そこで、人生最後の目的を見出すことができれば、非常に幸運なことでしょう。それには多分ある程度のお金が必要になるとは思いますが・・・。 2020/10/10
くれは
3
暑くて感想をまとめる気力がないが1点だけ・・・。この本は、このままではおそらく届けられるべき人に届かない。ぜひ医療ケアに向き合われている哲学者(榊原哲也さんや國分巧一郎さんなど)と対話・討論されて、そのダイアローグを書籍化いただけないでしょうか。「病気の人の国」と「健康な人の国」の断絶を埋めることは難しいかもしれないけれど、最初の丸太橋一本をかけられるのは著者をおいてほかにいないと思います。2020/08/12
オランジーナ@
2
エッセイかな2022/09/10
げんさん
1
私のかかった病院では、各診療科の連携があまりうまくいっていないように感じられました。あたかも、それぞれの診療科が1個の病院のように振舞っています。「総合病院」ではなくて「雑居病院」ですか?患者は自分の病気を質に取られている。哲学者はうまいことを言う。2021/08/02