出版社内容情報
国の怠慢と非寛容な国籍法が原因で、自覚のないまま二重国籍者になったり、国籍を剥奪されたり、無国籍者に陥る悲劇が発生している。どこに問題があるか。
内容説明
人は親や出生地を選べない。ますます多元的になる社会で、複数の国籍を持つ人は必然的に増えていく。蓮舫氏問題で脚光を浴びた「二重国籍」だが、国籍法の運用は旧態依然かつ不透明で、ナショナリズムに絡めた一方的なバッシングも目立った。外国出身者を親に持つ有望なスポーツ選手へ送られる拍手喝采の大きさとは、あまりにも対照的だ。国籍法の規定で外国居住の日本国民が国籍を剥奪される「悲劇」に抵抗する訴訟も起きている。国籍と日本人。私たちはどう考えればいいのか。いま、国民的議論が求められている。
目次
大坂なおみ選手が直面する国籍問題
第1部 蓮舫氏問題を考える(メディアの迷走;あらわになった国籍法の矛盾;国際結婚と国籍;「日台ハーフ」の中華民国国籍)
第2部 国籍と日本人(日本国籍の剥奪は正当なのか;国籍をめぐる世界の潮流;国籍法の読み方、考え方)
国籍に向き合う私たち
1 ~ 1件/全1件
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
さとうしん
19
前半で2016年に問題となった蓮舫氏の二重国籍問題及び日本・台湾間の国籍問題、後半で二重国籍問題一般を議論する。第一章は当時の蓮舫問題の推移のよいまとめとなっている。蓮舫氏が法務省より受けたとされる、日本では台湾出身者に中華人民共和国の国籍法が適用されるという説明については、確かに台湾出身者や関係者にそういう説明がされていたことがあるようだ。蓮舫氏については本人の努力ではどうにもならない部分も多く、バッシングは理不尽ということになるだろう。2019/10/13
かんがく
11
大坂なおみと蓮舫で話題になった二重国籍問題。そもそも何か問題があるのか?と改めて提言する本書。グローバル化が進む現代において国籍を一つに制限することに意味があるのか、様々な実例を挙げて問いかけており、興味深かった。2020/07/28
てくてく
10
国籍取得は権利を得るための権利であること、海外の国籍を取得することで日本の国籍を喪失することの不利益、国籍に関する基本的な考えが国への忠節、奉仕(=徴兵との関係)であった戦前ならばともかく、既に徴兵は行われていない日本において(徴兵がある韓国でも条件つきで重国籍を認めている)、さらにグローバル化の進行で戦前とは格段に国を越えた交流がある中で、既に海外では当然のものとして認める国が増えている二重国籍を日本で認めない合理的な理由はないなと改めて思った。2021/03/17
tototousenn@超多忙につき、読書冬眠中。
9
大坂なおみさんや、八村塁さんなどが活躍すると、「“日本人”大活躍!!」と報道するマスコミが大嫌いだ。彼ら彼女らは、果たして“日本人”なのか。“ダブル”ではないのか。一体“日本人”て何。そんな私の変な疑問には答えてくれない本書だった。2020/10/10
Nobu A
9
2018年4月に開催された「『二重国籍』と日本」シンポジウムでの発表を基にした9本の論文収録。弁護士、華僑研究と憲法学の大学教授、居留問題に対する活動家、ジャーナリストとそれぞれの執筆者が異なる視点から。耳目を集めた蓮舫元民進党代表の「二重国籍問題」や大坂なおみ選手の「日本国籍選択」報道に端を発し国籍法の是非に焦点を当てた非常に興味深い内容。重籍法の歴史的背景や国際比較及び海外の動向。グローバル化進展の現代、時代にそぐわない問題点等々。個人的には第6章「国籍をめぐる世界の潮流」が一番勉強になり面白かった。2020/04/06