出版社内容情報
日本の古代を大きく動かした15の戦い・政争を最新研究に基づき正確に叙述。通時的に歴史展開を見通すとともに、時代背景となる古代社会のあり方を明らかにする。
内容説明
かつての先入観にもとづく「前九年の役」「後三年の役」などの語は、今日では公平に「前九年合戦」「後三年合戦」と呼ぶようになっている。こうして、今日も変容しつつある古代戦乱の歴史的評価をとおして、古代史像を通観できるようにつとめたのが、本書である。
目次
磐井の乱
蘇我・物部戦争
乙巳の変
白村江の戦い
壬申の乱
長屋王の変
藤原広嗣の乱
橘奈良麻呂の変
藤原仲麻呂(恵美押勝)の乱
律令国家の対蝦夷戦争―「三十八年戦争」を中心に
平城太上天皇の変
応天門の変
菅原道真左降事件
平将門の乱・藤原純友の乱
前九年合戦・後三年合戦
著者等紹介
佐藤信[サトウマコト]
1952年生まれ。東京大学名誉教授、人間文化研究機構理事。東京大学大学院人文科学研究科博士課程中退。博士(文学)。専門は日本古代史(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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鯖
21
磐井の乱は継体帝が継いだことへの不満を新羅が後押しっていうのはなるほどなーと。お隣の国とはこの頃からもう大変。乱と変続きな奈良だけど、直接都を戦場にしたのは恵美押勝のみ。減税とかサトラップみたいな制度とか、いい制度だよなって思うやつばっかりなんだけど。漢字つかったこと以外。薬子の変は平城太上天皇の変になってた。しかし薬子、5人子ども産んでて、その魔性の女っぷりはすんごいなあ。高丘親王航海記読み返したくなっちゃった。養老律令は上皇と天皇を同位にしたけど、そこが対立することは想定外だった。2021/11/17
chang_ume
10
事件史からの古代再叙述ですが、いかんせん大化前代など史料の乏しい時期は読んでいて苦しい。やはり時代が降るにつれて密度が増していくような。そのなかで、「藤原仲麻呂の乱」と「平城太上天皇の変」を扱った第9講(寺崎保広)と第11講(佐藤信)からは、天皇と退位した天皇を同格と設定した大宝律令の矛盾が、現天皇と前天皇の間で確執を生んだ経緯を理解できた(太上天皇の規定は、当時の持統太上天皇と文武天皇の関係が円満であることが前提)。「太上天皇」と「上皇」では、「平城太上天皇の変」を境になるほど性格が変わったんだなと。2020/06/06
みなみ
9
古代史講義に続けて読了。太上天皇と天皇の権力争いが何度もあって、上皇と天皇の二重権力を恐れるのもわかる。薬子の変は名前くらいしか認識していなかったので、名前のつけかたがズルいなあと思った。薬子は上皇が寵愛した女性。その名前を事件に冠するということは、上皇の責任を回避したいということで、それはズルいなあと。道真の左遷は現代にもありそうな…社長が変わって合わなくなっちゃった、みたいな話?2020/10/08
吉田裕子
8
講座の準備として、第3講乙巳の変から第5講壬申の乱を中心に読んだ。「はじめに」にある通り、「戦乱の多くは、戦いの勝者や後の国家的立場によってその歴史が語られており、戦乱の実像に迫るためには、史料を批判的に検討しなくてはならない場合もある」。また、どうしても、偉人史観、人間ドラマ的な見方が刷り込まれている私にとっては、最新学説も踏まえ、当時の国際情勢であるとか、中央と地方の関係であるとかを踏まえた本書の歴史学的な記述は、大きく視野を広げてくれるものである。2021/02/12
akamurasaki
6
平安時代末期までの戦乱をひとつひとつ取り上げ、最新の研究を引用しながら解説。各章の最後により詳しい書籍を紹介しているのが便利で親切。しかし薬子の変が平城太上天皇の変に名前が変わっていたのかー。あの「クスコ」の響きが良かったのに(笑)。しかし歴史は常にアップデートされているなぁ。2019/08/14