出版社内容情報
反移民、反グローバル化、反エリート、反リベラルが席巻! ポピュリズム危機に揺れるEUの現実を、その法制度と機構から分析。
庄司 克宏[ショウジ カツヒロ]
著・文・その他
内容説明
欧州連合(EU)が、ポピュリズム危機に揺れている。反移民の声は衰えず、ポピュリズム政党への支持は増え続けている。中東欧では政権を担う党すら現れた。いまや、欧州の政治は左右対立ではなく、親EUの既成政党と反EUのポピュリスト政党という対立軸で動いているのだ。ポピュリズムの台頭を招いた要因はなにか。EUの基本理念であるリベラリズムは守られるのか。その統治機構や政策から分析する。
目次
はじめに 欧州ポピュリズムの衝撃
第1章 欧州ポピュリズムとは何か
第2章 EUとはどのような存在なのか
第3章 欧州ポピュリズムはなぜ出現したのか
第4章 欧州ポピュリズムはEUに何をもたらすのか
第5章 リベラルEUのゆくえ―どう対応するのか
著者等紹介
庄司克宏[ショウジカツヒロ]
1957年生まれ。慶應義塾大学大学院法学研究科博士課程単位取得退学。横浜国立大学大学院教授などを経て、慶應義塾大学大学院法務研究科教授、ジャン・モネEU研究センター所長。EUの法制度と政策を専門とする(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
巨峰
65
EUの歴史とシステムから必然的に広がっていく欧州のポピュリズムについてわかりやすく述べた新書。つまり、EUというのは、リベラルデモクラシーを掲げたエリート層により逆に非民主的(選挙なし・野党なし)に運営されているため、その反動としてEUにより国民国家から奪われた権限を取り戻そうというポピュリズム(大衆迎合的)な政治勢力が勢力を伸ばしているということ。日本でいうポピュリズムとはまた発生原因が違うようです。知らないことが結構多かったです。2018/10/16
skunk_c
62
2年前の書。Brexit、あるいは難民受け入れ問題で揺れるヨーロッパのポピュリズムを理論的に分析しているが、例えばルペンの国民戦線の具体的解説が詳しいわけではない。本書のテーマはむしろ副題にあるように、EUのエリート主義政策が、議会など大衆によるチェックを十分に受けることができないシステムであり、個々の国家の民主制度におけるポピュリズムの台頭が、そのEUのシステムを揺さぶることを、EUに対する丹念な論考で明らかにすることだ。「政府対野党の弁証法が働かない」システムの脆弱性、日本にとっても厳しい警句だろう。2020/11/09
venturingbeyond
28
ヨーロッパで顕在化する2つの反グローバリズム・反リベラリズム志向のポピュリズム(権威主義志向=ハンガリー・ポーランド、反緊縮・反市場主義志向=ギリシャ・イタリア・スペイン)を、EU法やEUの統治機構の制度規定性から簡潔・明瞭に説明する一冊。EU法研究の第一人者である庄司先生の手による良質な入門書。EU内のポピュリズムやナショナリズム、EUと加盟各国の距離感や齟齬などについて関心のある人は、必読の一冊。2024/01/10
coolflat
17
30頁。ポピュリズム政党は移民排斥を主張する排外主義ポピュリズムと司法権の独立などを否定しようとする反リベラルポピュリズムに大別できる。前者は特に急進右派や極右に見られ偏狭なナショナリズムと自国民に限定した福祉国家を擁護する。後者は民主主義には従うが、個人の自由な活動領域をできる限り確保しようとするリベラリズムに反対する。憲法裁判所を弱体しようとする事、メディアを統制する事、少数派を軽視する事などに特徴がある。例としては、ハンガリーのオルバーンが率いるフィデス、ポーランドのカチンスキが率いる法と正義がある2024/05/11
みなみ
10
ポーランドやハンガリーが保守反動政策を繰り出しているのを報道で見ていたので、こちらの本で勉強しようと読んでみた。まず、これまで漠然としか知らなかったEUの仕組みがわかった。選挙を経る国家の政策は、必要でも国民の反発のあるものは通らないことがある。EUは国家を超越した存在なので「国民の反対により改革が頓挫」ということがない。その一方で国家の頭越しに行われるEUの政策は必然的にポピュリズムの攻撃の的になる。EUの方針と自国の経済状況が見合わないのは、ロシアへの経済制裁に参加したくないイタリアの例を報道で見た2020/07/09