出版社内容情報
国力において圧倒的な中国・日本との関係を深化させる台湾。日中台の複雑な三角関係を波乱の歴史、台湾の社会・政治状況から解き明かし、日本の進路を提言。
野嶋 剛[ノジマ ツヨシ]
内容説明
台湾が激しく動いている。戦後日本は台湾に撤退した中華民国と国交を結んだが、後に中華人民共和国と国交正常化を行い、台湾は遠い存在になった。しかし、目覚ましい経済発展と見事な民主化、東日本大震災での日本への巨額の支援もあり、台湾は再び身近で重要な存在になりつつある。台湾は中国にとってのアキレス腱であり、日本にとってのジレンマだ。日中台の複雑なトライアングルの中、台湾は絶妙のバランス感覚で日中と巧みに渡り合う。二〇一六年総統選挙で劇的な政権交代を遂げた最新の姿を、政治、歴史、社会から解き明かし、冷戦期の固定観念から脱した新しい「台湾論」を提言する。
目次
序章 転換期の台湾
第1章 「台湾人の総統」になれなかった馬英九
第2章 台湾と日本
第3章 台湾と中国
第4章 台湾と南シナ海・尖閣諸島・沖縄
第5章 台湾アイデンティティ
第6章 例外と虚構の地「台湾」
第7章 日中台から考える
終章 日本は台湾とどう向き合うべきか
著者等紹介
野嶋剛[ノジマツヨシ]
1968年生まれ。朝日新聞入社後、シンガポール支局長、政治部、台北支局長、国際編集部次長、アエラ編集部などを経て、2016年4月からフリー(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
まーくん
91
”台湾”は国なのか?根本に切り込み問題の本質に迫る。戦後、日本は台湾に追われた国民党政権を”中国”として認め、不自然な関係を結んできた。そして日中国交正常化以降、一転、台湾に対し思考停止の状態に。その間、この”国”は民主化を成し遂げ、経済を発展させた。一方、中国も共産党独裁のまま巨大な経済大国となり、中台経済も不可分となってしまった。台湾人は本音では独立を望むが、北京は決してそれを許さないことも理解している。大多数の台湾人は当面、現状維持が最良の選択肢と考えている。香港の情況を見るにつけ、尤もかなと。2019/10/07
アキ
87
台湾は同じ東アジアの島国だが、支配されてきた歴史がある。オランダ・スペイン・中国・日本と。中国との関係性では、香港の情勢から中国と距離を保つ蔡英文政権が支持を集めるのは自然なこと。日台関係は東日本大震災以降新たな関係性が生まれつつある。日本統治時代を経て、1945年終戦と1972年日中国交正常化で2度台湾を捨てたとの認識は薄れつつある。しかし日清戦争で台湾を支配し、それを侵略と見なした歴史を日本人は知っておく必要がある。被支配者は決してそれを忘れないもの。この書は複眼的な見方で台湾を論じていて好感が持てる2020/06/23
万華
25
日本と台湾は重要なパートナーとしながらも国交断絶を余儀なくされたのはどうしてなのか。それには中国の圧力がある。とはいえ日本は東日本大震災の際、台湾から200億円以上の義援金で支援してもらったのに中台関係を他人事にして思考停止したままでいる。そんなことでいいのか、台湾を中国の一部ではなく台湾そのものとして認識し、自らの中に等身大の台湾を築き上げ理解することが重要だという野嶋氏の指摘に目の覚める思いがした。2021/08/29
那由田 忠
25
著者は、馬英九当選時に朝日新聞台北支局長だった記者。台湾が中国の一部だとの押しつけを認めてしまう「朝日」にありながら、台湾の実態をていねいに説明してくれる。ただ、さかんに日本の思考停止を強調するが、それって左翼の無視とマスコミの中国圧力への迎合のこと。人口比で訪日観光客が最多が台湾で親日「国」として有名なのに、マスコミが中国の立場を原則だと流し続けることを批判できないだけ。90年代から台湾の多くの人は国連加盟、国際的に認められることを望んでいたんだよ。南沙諸島の実効支配の指摘が最も面白い話だった。2021/06/23
YO)))
24
蔡英文当選までのここ十年ほどの政治動向、尖閣諸島をはじめとする日台中関係の問題、独立への国民の意識(純粋に台湾を自らのアイデンティティーの拠り所とする「天然独」の台頭)など、最近の諸事情について書かれていてためになった。2019/06/18