出版社内容情報
東日本大震災によって、災害への対応の常識は完全に覆された。科学的なリスク対策、心のケア、コミュニティ再建など、被災者の視点から災害対策を問いなおす。
内容説明
東日本大震災によって、災害への対応の常識は完全に覆された。これまでの科学的・客観的な災害対策は、すべて被災者の視点から見直されなければならない。リスク対策、心のケア、コミュニティ再建、巨大防潮堤計画、死者をどう弔うかなど、従来の災害学・災害対策では解決できない諸問題を、弱さの論理に根差す、新たな「震災学」の視点から考え抜く。東北の被災地に密着しつつ、多彩な調査・研究活動を展開してきた気鋭の社会学者が、3・11以後の社会のあり方を構想する。
目次
第1章 いまなぜ震災学か―科学と政策を問いなおす
第2章 心のケア―痛みを取り除かずに温存する
第3章 霊性―生ける死者にどう接するか
第4章 リスク―ウミ・オカの交通権がつなぐもの
第5章 コミュニティ―「お節介な」まちづくり
第6章 原発災害―放射能を飼い馴らす
著者等紹介
金菱清[カネビシキヨシ]
1975年生まれ。社会学・災害社会学。東北学院大学教養学部地域構想学科教授。『文藝春秋』2013年2月号掲載の識者が選んだ108人(今後10年間に世界的な活躍を期待できる逸材)に選ばれる(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
佐島楓
56
「上から」及び「科学的」な目線ではなく、当事者の視点からの復興を。当然のことだと理解していても、やはり被害に直接遭われた方々と他県の者では、相当認識にずれがあるだろう。個々人にオーダーメイドの復興を、と求められる背景はよくわかる。被害規模が甚大なため、行き届くには時間がかかってしまうだろうが(熊本も含め)、何等かの形で力になりたい。2016/06/06
おさむ
37
徹底した目線の低さが特徴的で、地に足のついた論考です。痛みを取り除くのではなく、温存する心のケア。正者と死者の間の存在を認めて、共に生きる。すべてのものが海から陸(オカ)へ向かってくる「身水性」。追悼でも、教訓でもない記憶型の慰霊碑。たとえ大津波があろうとも海とともに生きていく強い決意。震災から5年が過ぎたいま大切な視点です。2016/06/01
AICHAN
29
図書館本。読み終えたが、頭に内容がほとんど残っていない。いいことが書いてあったような気がするが記憶が薄れている。どうも集中力が切れている。ウツがひどくなり始めているようだ。まずいなあ。2017/03/28
樋口佳之
13
山古志村の復興は、最初に墓地が直され、二番目に田んぼ、三番目に養鯉池、そして神社も早期に再建され、最後に住宅がつくられ/個人が癒されれば集団も回復すると私たちは考えがちだが、被災地のコミュニティの互助機能を回復させることが心のケアの上で重要であるという逆方向の波及効果こそが重要/タイトルからはかなり精神的な問題を説いた本のようですが、違います。生も死も丸ごと抱えて生きている生身の人とコミュニティーをどう支えていくべきかを実例として語る内容に多くを気づかされました。2016/11/06
あかつき号
10
『呼び覚まされる霊性の震災学』の教授版。学生たちがそれぞれ取り上げたテーマの総論。 大規模災害は鳥瞰されたものがニュースとされるため、各地域で求められる復興、再生への実現の難しさ(というより行政の熱意の無さか)。 これからも、未曾有の災害も頻繁に起こると仮定して、そのような国土で生きていること、「これからのお前(息子)の人生に三度は起こる津波」を念頭に、備えたい。それは自分の生き方をも定めていくものとなる。2016/08/28
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