出版社内容情報
「考える」ための最良の問題を用意しました! 古典的な哲学の難問や複雑な現代を象徴する事件を思考することで、一皮むけた議論ができるようになる。
内容説明
議論をより深めるために用いられる思考実験。哲学における古典的な問題から、SF小説の一場面のようなものまで、その射程はとてつもなく長い。だから、哲学的に思考する経験がない人にでも、考える手がかりとなるだろう。本書では、自己、他者、倫理、社会といった四つの分野にわけて、読者の頭を悩ませる思考実験をセレクトした。また、「現代」というこの世界を感じ取れる読み物としてもいける。
目次
1 自己(私はなぜ「私」だと言え切れるのか?;私の夢こそが現実ではないのか?)
2 他者(あなたがいなければ、私はいないも同然なのか?;他人の心が分からなくて何が問題なのか?)
3 倫理(ウソをつかないことは本当に正しいのか?;善悪は何で判断すればよいのか?)
4 社会(人間の未来はどこへ向かうのか?;近代の終わりはディストピアなのか?)
著者等紹介
岡本裕一朗[オカモトユウイチロウ]
1954年生まれ。九州大学大学院文学研究科修了。博士(文学)。九州大学文学部助手を経て、玉川大学文学部教授。専攻は哲学・倫理学(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
kasim
33
「大勢を救うために一人を犠牲にしてよいか?」で有名なトロッコ問題をはじめ、自己とは、という古典的な問いから始め脳科学、AI、生命倫理まで射程に入れた75の思考実験。具体性の強い哲学の入門書という感じ。もう少しパズル的な要素があってもいい気もするが、幅広い教養はさすが専門家の仕事で、カントからドゥルーズ、サールまで活用されている。予想外に多くの文学作品が素材に用いられていて嬉しい。カフカ、筒井康隆、ディック、ル・グィン、カルヴィーノ、ピランデロ…。読んだのもあるけど、原典に戻りたくなってしまう。2019/05/24
アドソ
16
難しかった。流し読みできる本ではなく、一つ一つの思考実験にそれぞれ頭を悩ませて考えないと、ちゃんと読んだことにならないのではないかと思うほど。文学に思考実験という名前を与えたところがすごい。文学とは、まさに現実とは違う世界に生き、違う人生を生きることなのだろう。高校の国語がこういう授業だったら楽しかっただろうに。著者は大学でこういう講義をされているようだけれど、どういう名前の講義なんだろう。2019/11/16
壱萬参仟縁
12
75の事例集。妄想といえば、2年前にしてみたが、他人には迷惑(043頁)をかけたかもしれない。記してお詫び申し上げる。その人には結婚まで決意させてしまったので。ミラーニューロンとは、1996年に、リゾラッティを中心としたイタリアのパルマ大学のチームが発見した神経システム(124頁)。「自分が行為を行なうときにも、他人が行為を行なうのを眺めているときにも活性化するニューロン」(同頁)。覚えておきたい。真理とは、それなくしては生きていくことができない人間が捏造した嘘(158頁)かもしれないという指摘も一理か。2014/01/30
ミズグ
9
抽象的理論が具体的事例として理解するにはとてもよいと思う。岡本先生の文体は非常に読みやすい。2014/02/02
タカヒロ
5
この手の本は著者自身考案の思考実験ばかりで、哲学的な裏付けや意義のある実験が多くないような印象だったが、この本はそうではなかった。特に原典を思考実験としてテーマごとに深めていく点はとても勉強になる。人間存在の根本を、回り道しながら考えさせてくれる良書。2018/05/04