出版社内容情報
『論語』には、人を「学習」の回路へと導き入れる叡智がある。その思想を丁寧に読み解き、ガンジー、サイバネティクス、ドラッカーなどと共鳴する姿を描き出す。
内容説明
東アジア最重要の古典『論語』。この書物には、人間が真に自由に、生き生きと存在するために必要なことが、最高の叡智と具体的な言葉で書かれている。『論語』自身に『論語』を語らせ、そのダイナミックでみずみずしい世界に読者を案内すると同時に、その思想が儒教の伝統の中に生き続け、さらにはガンディー、ドラッカー、ウィーナーたちの思想と共鳴しあう姿も描き出す。「最上至極宇宙第一の書」に対する魂の読解書。
目次
第1章 学而時習之―学習とは
第2章 是知也―知とは
第3章 無友不如己者―君子の生き方
第4章 是禮也―礼とは
第5章 必也正名乎―名を正すとは
第6章 孝弟而好犯上―孝とは
第7章 仁者不憂―仁とは
第8章 儒家の系譜
著者等紹介
安冨歩[ヤストミアユム]
1963年生まれ。京都大学大学院経済学研究科修士課程修了後、京都大学人文科学研究所助手、名古屋大学情報文化学部助教授、東京大学大学院総合文化研究科・情報学環助教授を経て、東京大学東洋文化研究所教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
イプシロン
36
安冨さんの思想の基盤はカント的であると思えた。人間の理性には限界があり、真理など探究できない。したがって真理を探求して結論を出すことには意味はなく、真理を探求する方法論を探し続ける過程にこそ意味がある。しかし個々人には差異があるので、決定的な方法論は存在しない。したがって、真理探求の方法論も各人に見合ったもの(中庸であるべき)であるというのがカントの思想であるからだ。こうした思考の変革をカント自身「コペルニクス的転回」と言ったのである。同様のことは本書における『論語』の解釈にもあてはまると言える。2021/11/23
デビっちん
31
そもそも論語をあまりよく読んでいないので、見当違いな感想になってしまうかもしれません。論語を偉人による人生訓で終わりにせずに、細かく分解し、現在の生活を生きやすくするために再構築してくれているように感じました。中でも印象に残ったのは、「名を正す」という項目でした。「名」を正しく呼ぶことが、人間がまともに生きるための第一歩とのことです。好きなものは好き、嫌いなものは嫌い、やりたい事はやりたい、やりたくない事はやりたくない。+名を正しく呼んでいるだろうか?2018/01/19
イプシロン
30
初読時は本書を手に入れた嬉しさで、一気読みしたので、安冨哲学の全貌がはっきり見えなかった。なので今回の再読は熟読してみた。とはいえ私は、2019年夏に行われた、参院選の「れいわ」の候補者として、安冨さんを知った口なので、もう二年以上にわたって、彼女をWatchし続けている(ちょっとしたストーカーレベル:笑)。さて、そういう私の安冨論語観は、『論語』は「学習」という回路が開いていることを「仁」として、その仁を基にする思想だということだ。さらには、『論語』に現れる仁・義・礼・智・信・勇・忠・孝・悌・和などは、2022/01/05
nbhd
20
正直、論語の印象って「よろこばしからずや~たのしからずや~」の響きがオモシロいねってことと「人の世を支配するために使われがちなお利口さんの教え」くらいだったのですが。それが読んで衝撃、、、著者の解釈によると、論語はザックリ言って「自動フィードバック学習」を説いたもので、ウィーナーのサイバネティクスやドラッカーの考えに通じるものなのだといいます。僕はそもそもベーシックな論語解釈を知らないのですが、様々な解釈誤読を含めた「壮大な読み」に開かれているから古典なのだな、と論語を見直しました。2019/07/19
kyoko
12
安富先生がネット講座で30分かけて「学びて時に之を習ふ。亦説(よろこ)ばしからずや」の一行を詳しく解説しているのを見て感動し、この本を読んでみた。今までとは全く異なる論語の読み方。でも本当に納得いく読みだった。仁とか礼とか忠とか孝とかの表すところ、今までの(わたしの)儒教の考え方とは全く違っていて、論語が革命の書と言われる所以がよくわかった。それにしても安富先生の優しさ、哀しみ、素直さ、正義感・・・深い人間性が、人間的魅力が満ち溢れていて、本当に素晴らしい。括目の書。2019/09/09
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