出版社内容情報
伊勢神宮をめぐる最大の謎は、誕生にいたる壮大なプロセスにある。そこにはなぜ、二つの御神体が共存するのか? 神社の起源にまで立ち返りあざやかに解き明かす。
内容説明
日本全国の神社の筆頭に君臨する伊勢神宮。しかし、その成立の背景には、さまざまの「謎」がつきまとう。伊勢神宮の誕生は、はたしていつだったのか。大和の王権がなぜ伊勢に最高神をまつるのか。当初そこにまつられた国家神とは何か。皇祖アマテラスはなぜ「発明」される必要があったのか。そして、心の御柱と神鏡という二つの御神体が共存するわけとは…本書では、こうした難問を、列島における神話と神社誕生の根源にまでさかのぼり、あざやかに解き明かす。
目次
はじめに―神と神話と神社と
序章 神々が名をもつ前は
1の章 自然の神から王権の神へ
2の章 神社の二つの起源
3の章 『日本書紀』が語る伊勢神宮の誕生
4の章 伊勢神宮の誕生の謎を解く
終章 国家神から皇祖神へ
むすび―正殿床下は聖婚の場だった
著者等紹介
武澤秀一[タケザワシュウイチ]
1947年生まれ。建築家/博士(工学・東京大学)。1971年、東京大学工学部建築学科卒業。同大学院工学研究科修士課程(建築学専攻)を中退し、同大学助手。その後、設計事務所を主宰するとともに、東京大学、法政大学などで設計教育指導にあたった。神社仏閣などの建築空間をとおして日本人の心のありようを探究することがライフワーク(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ハタ
58
「伊勢神宮・皇祖アマテラスの事を調べよう!」企画第2弾。本来は先に呼んだ著者と別の著者の見解を見るのが妥当なんですが非常に興味深いタイトルの為こちらも読了。「天皇の謎」と比べ天照が作り出された政治的経緯・考察がメインテーマであり、本書の前に「日本書記」「古事記」の現代語訳を読んでおけばよかったと後悔するぐらい難しい内容でした。「天照の発明」等やや過激な文章に一抹の不安を持って読みましたが、驚く程詳細に研究し資料を集めての持論であった事が読後印象に強く残ります。抽象的概念が具現する瞬間を見せられたような。2016/04/22
遅筆堂
29
単なるマニアかと思わせるような文章であるが、中身は濃い。じわりじわりと伊勢神宮の核心に到達する。諄い、しつこい感は多々あるが、それは味とも言うべきか。反論も肯定もできるだけの知識が無いが、そうであろうと思わせる。宗教、文化、政治が混沌として成立した伊勢神宮は、実に興味深い。また、行ってみたいぞ。2012/06/12
芍薬
15
分かりやすくかつ柔らかい文体で何度も説明があり内容に拘らずなんだか暖か気分になりました。 しかしやっぱり日本書紀読まないとダメですね。2013/06/27
はちめ
13
著者はいわゆるアカデミズムの人ではないので定説にとらわれない面白さはあるが、ときどき仮説が事実として語られることもあるので注意が必要。ただ、アマテラスという思想が案外新しく、と言っても天武持統の時代に意図的に形成されたということは事実かもしれない。だとすれば当然持統天皇の意思が強く働いているということになる。壬申の乱を勝ち抜いた天武持統、特に持統天皇は自身の正当性を明らかにする必要があり、そのためにアマテラスという思想を日本書紀の神話編の中心に据えたということになる。☆☆☆☆2021/08/04
新父帰る
7
2011年3月初刊。この本を読むと、伊勢神宮について、ほとんど何も知らなかったことに気付かされる。皇祖神アマテラスが祀られていることぐらいしか知らなかった。しかし、では伊勢神宮はいつ創祀されたのか、何の為に創祀されたか、祀られていた神は何か。アマテラスの起源は何か。何故神鏡がご神体なのか。心の御柱とは何か。何故、アマテラスが皇祖神となったのか。何故伊勢なのか。天武天皇の時に何故「日本書紀」、「古事記」の編纂が命じられたのか等々、これらの疑問に本書は十分応えてくれる。なかなか読み応えのある良書だと思う。2023/05/29