内容説明
なぜ政治家も企業家もヤクザに引け目を感じるのか。「ヤクザは武士道の継承者」説が浸透しているのは何故か。本書は武士と任侠の関係を「男らしさ」の来歴という観点から読み解いていく。戦国の世から徳川の泰平の世への転換と軌を一にして、戦士の作法だった「男道」は色あせ、役人の心得である「武士道」へと様変わりする。江戸前期に鳴らした「かぶき者」が幕府から弾圧されると、「男」を継承したのは江戸の藩邸が雇い入れた駕篭かきなど町の男達だった。武士が武威を彼ら荒くれ男に肩代わりさせた帰結が、幕府のあっけない倒壊…。武士道神話・任侠神話を排し史料の博捜により明らかにする「男」の江戸時代史。
目次
1章 男とはなにか
2章 逸平と金平
3章 任侠の精神
4章 男の色
5章 新しい男たち
6章 されど武士の一分
7章 悪の華
8章 戦士失格
9章 ノーブレス・オブリージュ、ヤクザ
著者等紹介
氏家幹人[ウジイエミキト]
1954年福島県生まれ。東京教育大学文学部卒業。歴史学者(日本近世史)(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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すのさん
7
戦国時代から江戸時代に移るなかで、戦国に存在した「男」たちは徳川体制に組み込まれていく。それに伴って荒々しい「男道」から政治的な「武士道」へと様変わりしていく。武士の武威は主人の駕籠かきや供回りを務める、町の荒くれものに外部委託されていった。武士としての勇猛さを失った役人武士には、「男道」を持つ彼等に対する引け目や礼賛の意があったという。当時の武士からしても、自分達が強い男としての武士ではなくなったということを無意識にか意識的にか認識していたのであろうことがわかる。2021/02/23
犬養三千代
7
歴史学者さんではあるが数々の文献を読み込んだ面白い分析で飽きさせない。戦乱の世が終わり武士の身分が上昇するとともに弱っちくなっていく。武闘を担うのは奴そして籠かきそして極道。昭和の総会屋まで持ちつ持たれつのパラレルな関係。そういえば小泉進次郎の曽祖父は大臣であり首から足首まで倶利伽羅紋紋だったような。2019/07/11
terukravitz
3
図書館本 ★☆☆☆☆2017/11/07
すがし
3
武士道と任侠の類縁関係。どころか、両者は本質的には同じものなのではないかという大胆な論考。本書の趣旨とは少し離れるかもしれないが、『命がけで戦う』ということが、素面でできるはずもなく、勇猛さは『悪』や『粗暴』と必ず近縁関係にあるという事実が暗示されているように思える。2010/12/27
bittersweet symphony
2
ほんとうに生き死にの狭間にいた武士の作法というのは、江戸時代以降のマニュアル化されたそれ(新渡戸稲造も含め)とも、それがために弱体化した武士を補完するために導入されたヤクザ的世界(駕籠かき・火消しなど市井の話)とも全く関係のないものだというのを最終的には主張している本です。政治家が任侠的世界観とサムライの世界を混同して語るのはやはり気持ちの良いものではないですからね。2008/10/14
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