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ちくま新書
「分かりやすさ」の罠―アイロニカルな批評宣言

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  • サイズ 新書判/ページ数 235p/高さ 18cm
  • 商品コード 9784480063021
  • NDC分類 104
  • Cコード C0210

出版社内容情報

「分かりやすさ」という名の思考停止に陥った現代日本。シロかクロかというニ項対立図式が、かくも蔓延しているのはなぜか。「批評」の可能性を問う渾身の一冊。

内容説明

「分かりやすさ」という名の思考停止が蔓延している。知識人ですら、敵か味方かで「世界」を線引きする二項対立図式にハマり込んでいる。悪くすると、お互い対立する中で「敵」の思考法が分かるようになり、「敵」に似てきてしまう。こうした硬直した状況を捉え直す上で、アイロニカルな思考は役に立つ。アイロニーは、敵/味方で対峙する。“前線”から距離を置き、そこに潜む非合理な思い込みを明らかにする。本書はソクラテスやドイツ・ロマン派、デリダなどアイロニカルな思考の系譜を取り出し、「批評」の可能性を探る刺激的な一書である。

目次

序 カンタン系化するニッポンの思想
第1章 「二項対立」とは何か?
第2章 哲学に潜む「二項対立」の罠
第3章 ドイツ・ロマン派の批評理論
第4章 「アイロニー」をめぐるアイロニー

著者等紹介

仲正昌樹[ナカマサマサキ]
1963年広島県生まれ。東京大学総合文化研究科地域文化研究専攻博士(学術博士)。金沢大学法学部教授。政治思想史・比較文学を専攻(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

kasim

30
題からは現代社会の批評のように見えて、近代哲学の流れも押さえられる刺激的な一冊だった。現代の右と左の二極化が第三の道を許さないことによる膠着を指摘し、こうした二項対立の牢獄がヘーゲル以来受け継がれてきた近代を概観、その牢獄から距離を取って見つめるアイロニー的な発想に可能性を見出す。ただしアイロニーは「戯れ」であり救世主的解決策ではないため、二項対立に囚われている者からは、シニシズムと曲解され党派性を明確にするよう迫られ批判される。ヘーゲル、マルクス、アドルノ、ベンヤミンの関係がすっきりと整理され有難い。2023/10/24

ころこ

24
本書における二項対立とは、1章では政治的な二項対立です。本書出版後10年超経て、現在でも変わらず行われている不毛な対立の起源として、2章において、ヘーゲルの弁証法とヘーゲル的観念論を乗り越えるために読み替えたマルクスの唯物論まで遡ります。1章の軽さから一転して、2章には深い議論が待っています。意外にも、その2章の見取り図が分かり易いのは、1章での右派左派両者の議論が、自らの立場を主張するというよりも、相手の主張を否定することに自己目的化することで、共に否定神学的な似姿になっているという、著者の鋭い指摘の伏2018/03/05

袖崎いたる

13
二項対立は議論の単純化で、その語法で語ればバカに見えるが、しかし内容は「分かりやす」くなる。だから難しいことを過程をすっ飛ばしてわかってもらえたりする。つまり動員しやすい。著者の立場はアイロニスト。要するに二項対立的な右か左のどちらかに与する虫瞰的な構えではなく、増殖したり変形したりする二項対立の動態分析を行う、鳥瞰的な位置でものを考えるのである。彼からすれば「分かりやすさ」は「考えなさ」であり、「無知の知」ならぬ「知の無知」を意味する。本書は弁証法やアイロニーの誤解を矯正するファルマコンにもなるだろう。2016/05/04

NICK

9
二項対立から生み出される物語の「分かりやすさ」はときに問題を矮小化したり議論を硬直させたりする。そうした二項対立という図式の「罠」をいつもの仲正節で皮肉っていく内容。西洋哲学に通底する二項対立をプラトンからマルクスに至るまでおさらいし、デリダやシュレーゲルなどのドイツ・ロマン派による二項対立批判を紹介している。「戯れ」と「真面目」の間を漂うアイロニーの戦略は確かに二項対立批判において有効かもしれない。しかし仲正のようなケンカの売り買いするような態度を取りたいかというと……2014/12/17

さえきかずひこ

8
最近ヘーゲルの『精神現象学』を読み終えて、それにしても弁証法ってのは分からんな、正反合でアウフヘーベンとかいうけど、などと思っていたところ、西欧的な二項対立の起源からヘーゲル、マルクス主義、ベンヤミン、アドルノにいたる弁証法の歴史を概説してくれた第2章がとても為になり、ありがたかった。ポストモダン思想に通じる初期ドイツロマン派の先駆的な考えというのも朧ながら知れて良かった。シュレーゲルという人にはどうも惹かれた。それにしてもアイロニーについての三、四章はアイロニーをよく分かっていない者としてはただ込み入っ2017/04/24

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