内容説明
いまや、数千億円ともいわれる「オタク」市場。経済界も一般メディアも、もはや無視できない存在となった「萌え」の世界。ではなぜ、オタク男たちは二次元のキャラクターに「萌え」るのか。そもそも「萌える」という行為にはどういう意味があるのか。「萌える」男に純愛を求める者が多いのはなぜなのか。こうした疑問に、現代社会論とジェンダー論、そして実存の観点から答える、本邦初の明快な解説書。
目次
第1章 萌える男は正しい
第2章 萌えの起源―現実世界における恋愛の限界と恋愛資本主義
第3章 萌えの心理的機能
第4章 萌えの社会的機能
第5章 萌えの目指す地平―家族の復権
第6章 萌えない社会の結末―家族の解体
著者等紹介
本田透[ホンダトオル]
1969年兵庫県生まれ。高校を二度中退後、大学検定を経て、早稲田大学第一文学部哲学科入学(中退)、同大学人間科学部人間基礎学科卒業。出版社勤務の後フリーとなり、「萌え」評論家、ライトノベル作家に(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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海猫
65
この本、軽く目を通したことあるけどちゃんと一冊丸ごと読んだのは今回が初めて。奥付を見るとこれって2005年に出た本なのね。月日が流れるのは早いもんだ。で、この本は同著者の「電波男」の新書的語り直しともいうべき内容。ネットスラングがばんばん放り込まれていたり露骨に攻撃的な「電波男」の方が私は好みだけれど、この「萌える男」は切り口の違う部分もあってそれはそれで参考になった。特に「個人の鬼畜化」についてはつい最近も鬼畜化した男性が大事件を起こすようなこともあったし、普遍的なことを語っているんだろうなあ、と思う。2025/03/31
佐島楓
21
男性のほうが女性より、生きづらい社会になっているのかな、と思った。要は、バランスだと思います。2014/04/17
Takayuki Oohashi
16
この本の後半部を読んでいる時、僕はクーラーのきいた近くのスーパーのイートインスペースに居たのですが、その時、店内にはTUBEがBGMで流れていました。この作者が「恋愛資本主義」と呼んでいる現代のセックスや恋愛が商品として社会に認知されている思想が、まさにこの歌に象徴されているように思いました。この思想が、恋愛できない・しない男の「萌え」をキモいとか現実逃避だとかレッテルを貼り、実際は社会の誰にも脳内補完だから迷惑をかけないのに迫害していると、この作者は主張していました。オタクの僕はその言葉で救われました。2016/07/02
Arowana
8
モエシャンの徳性は、仮想する能力を活かすことで、挫折したロマン性がルサンチマンに転化した結果、現実世界(実社会)に実害を齎す危険を回避しつつ、自慰行為(萌える=乙女回路)でガス抜きできる点にあるといえそうです。自分達は人畜無害な羊(平和主義者)であって、性犯罪の温床にもなっている鬼畜化しがちな猟色主義者達とは区別していただきたいとの事でした。堕落しきった現在の恋愛市場からの脱却を宣言し、オタクへの不当な差別を助長し続けている既存のメディアに対して反論と提言をするべく独自の論を展開する筆者の代表的著書です。2016/10/26
はすのこ
8
本書の情報自体は古いが、萌えの概念自体は普遍である。本書に記載されている萌えの定義は2015年現在でも適用できるだろう。本書の内容を私は好意的に受け取った。私が思うに本書はオタクか非オタクかを分ける指標である。そして非オタクの方こそ、本書をより本質的に書評出来るのだと考える。本書は「気持ち悪い」のだ。私含めオタクの方々は、萌え文化に肩まで浸かっているから、この生理的気持ち悪さを忘れている。気持ち悪さを感じている方は本書の異常な価値観、サブカルバイアスがかかった筆者の異常心理に気が付くだろうと思う。2015/12/20