内容説明
ひきこもりやフリーター、ニートなど、自分の生き方が定まらず、あてどなく漂う若者が増えている。こうした若者の「難民」化は、本人にとっても社会にとっても決して望ましいことではない。だからといって彼ら/彼女らを非難しても意味はない。いま本当に必要なのは、若者を絶望させないための仕組みを構築することである。教育、法、労働という三つの側面からそのためのプログラムを構想する本書は、若者自身のよき生とよき社会を実現するための必読の書である。
目次
第1章 日本の若者問題とは何か(大人とは何か;大人は死を内在化している ほか)
第2章 「教育システム」はこう変えよ(「教育システム」構想のための五大原則;義務教育機能を限定せよ ほか)
第3章 「法的な通過儀礼」を設定せよ(法的な「大人化」の時期とは?;「法的な通過儀礼」の第一段階 ほか)
第4章 就労体験で間延びした日常を立て直せ(つねに労働は社会性を帯びる;労働経験を「学校教育」とは別に味わわせる ほか)
第5章 「上昇システム」への依存を断ち切れ(「学問の要は活用にあり」を復活させよ;構想実現にとっての克服課題)
著者等紹介
小浜逸郎[コハマイツオ]
1947年横浜市生まれ。横浜国立大学工学部卒業。現在、国士舘大学客員教授。家族論、教育論、思想、哲学など幅広く批評活動を展開
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
テツ
23
こどもとおとなを分かつ境界は何処にあるのか。確かに周りを見渡してみてもいい年こいているのにおとなとは言い難い生活をしている方も目に入り(自戒も込めつつ)一体いつからおとなになるのかということについて考えさせられた。おとなになるための通過儀礼。儀式的なものは現代では滅んでしまっているけれど、そうしたものが社会通念上存在していると精神的にも成長出来るのかもしれないな。教育だけでも社会だけでも上手くいかない。雛鳥を飛び立てるように、自分で餌を取れるように育てるのはなかなか難しい。2018/07/14
ばりぼー
22
今の日本社会は、子どもを社会的・心理的な大人にしていくための有効な装置(通過儀礼)を持っていない。そしてこれは生理的な大人になっている人間を一般社会とは無縁な長い長い就学期間の中に囲い込んで、いつまでも「社会的・心理的な子ども」として扱うことを意味する。そこで教育システムの改革案として、「義務教育年限を8年に縮小、小学校を4年、中学校を4年とする。授業は午前中のみ。科目は主要科目に限定し、技能科目は民営化する。高校は私立を中心とし、専門性を強めた独自のカラーを強く打ち出す。就学期間は4年」を提案したい。2020/10/11
Rion
3
本書は日本における大人の定義のたたき台としては良い。日本の子供が「大人」になる機会を失っている現象を嘆く。現代社会でどこからが「大人」なのか曖昧になり、思春期の長期化を指摘することはわかる。ただ、本書でゆとり教育を失敗と位置づけ、英語教育や大学教育はエリートのみという立場は賛同できない。大人化への具体的な方策が述べられるものの、スキルがすぐ陳腐化するかもしれない世界で職業経験を早める意義や共働きの家庭に子供のしつけが全てできるかも疑問。単身世帯や人生長期化の影響も含めたうえで再議論すべき問題である。2017/09/17
鹿角
3
大人になるにあたって何らかのイニシエーションが必要なのは同意。でもそれを法整備でやると結局形骸化しそう。教育の現場を「教師の権威」で片付けるのは、結果的に過剰依存の生徒増やして逆に「大人」が減るからダメじゃない?納得できる所と納得出来ない所と色々有りすぎて書ききれない。2014/09/19
ミツ
3
学力低下、学級崩壊、ひきこもり、フリーターの増大など現在の若者や学校を取り巻く諸問題を解決するための構想を「教育」「法」「労働」の観点から提示した作品。あくまで計画であり、具体的に実現可能かどうかはあまり問題にされていないのでところどころ楽天的な理想論のままで終わってしまっている感があるが、それでも個々の問題を別個に取り組むのではなく、こうした一度全体を見渡した上で相互の関係を考慮した総合的な構想を提案することはとても重要だと思う。良作。2011/02/17