内容説明
近年の政・財・官界にわたる腐敗や規律の緩みは、「制度疲労」の極致に達している。かつて、このような社会状況は、たとえばヴァイマール期ドイツでも見られた。そこでは「改革」が叫ばれながらも、漠然とした危機感が漂うなかで「決断主義」や「排除の論理」が横行し、居丈高な「世論」が山積する問題を単純化した結果、ヒトラーによる独裁を招くことになった。外交官としてのドイツ体験をもとに、日本政治再生の糸口をさぐる。
目次
第1章 政治危機の深層
第2章 「決断主義」とは何か
第3章 独裁はなぜ生まれるのか
第4章 世論はどこにあるか
第5章 「抵抗勢力」の虚像と実像
第6章 「他者」との共存をめざして
著者等紹介
原田武夫[ハラダタケオ]
1971年生まれ。東京大学法学部中退後、外務省入省。経済局国際機関第2課、在外研修(ベルリン自由大学政治学部、テュービンゲン大学法学部、ドイツ外務省上級職員初任者研修)、在ドイツ日本国大使館、欧亜局西欧第1課、大臣官房総務課を経て、現在アジア大洋州局北東アジア課課長補佐。外交実務のかたわら、憲法学、比較法学、政治思想に関する研究活動を日独で続ける
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
TYURA BOY@CULTURE
1
カール・シュミットの制度的保障論を理解するために。
うえ
1
タイトルとはうって違ったシュミット論。「ヒトラーによる独裁の背景には政治・経済上の危機があった。またその独裁を担ったのはヒトラーだけではなく,その体制に組み込まれたすべて」「ドイツ公法学では一般的に,前国家的な人権ではなくむしろ国家の存在を前提とし,この国家からの自由を意味するものとして「基本権」が語られる」2014/10/30
白義
1
新書では珍しいカール・シュミットの解説書。この本の背景には小泉改革という状況があって、シュミットの独裁や友敵理論を語りながら、政治の本質とそれへの構えを説いている。以後の原田武夫はなんか陰謀論っぽい人になった気もするけどこれはなかなか良書。熟慮の多元リベラル的に読み直されたシュミット像はかなり違和感あるけど、あながち悪くない。デリダのシュミット論に触れてるところも目配りの広さを感じさせる2011/04/15
koishikawa85
0
外務官僚(当時)の感想文以上のものではない。カール・シュミット擁護と小泉改革批判が結びつくのは奇観というほかはない。それだけシュミットの思想が幅広く、矛盾だらけということもできるが。それから現代日本への批判はあまりに抽象的で何がいいたいのかさっぱりわからない。10点満点で3点くらい。2010/08/29
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