内容説明
プラトンやデカルトなどの哲学者は、身体や情緒の問題を、うまく解きほぐすことができなかった。そのためその人間観は、私たちの経験や常識とはどこかずれている。そこで本書では、誰もが納得できる話から始めて、少しずつ思考を重ねていき、情緒や身体の本質に迫っていく。その過程で、人間が社会生活を営む上で欠かせぬ言語を取り上げ、言語だけが「意味」をもつのでなく、身体や情緒も「意味」性を帯びており、社会を作り上げる要素でもあることが示される。私たちの性愛感情の源にも迫った本書は、「人間」という存在を深く理解する上で示唆に富む、新しい人間学の試みである。
目次
第1章 哲学が苦手としてきたテーマ―身体と情緒
第2章 人間は動物の一種だが、ただの動物ではない
第3章 心とは「はたらき」である
第4章 身体とは「意味」の体系である
第5章 情緒とは「開かれ」の意識である
第6章 「意味する」とは何を意味するのか
第7章 言語の本質とは何か
第8章 身体と情緒の「意味」性
第9章 性愛感情とは何か
第10章 人はなぜ恋をするのか
著者等紹介
小浜逸郎[コハマイツオ]
1947年横浜市生まれ。横浜国立大学工学部卒業。家族論、教育論、思想、哲学など幅広く批評活動を展開
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感想・レビュー
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tamami
47
哲学は情緒や身体等について、対象としてしっかり扱ってこなかったのではないかと著者は言い、現代におけるそれらの捉え方について語る。人間は動物の一種だがただの動物ではない、心とは「はたらき」である、身体とは「意味」の体系である等々以下の章立てにおいて、心、身体、情緒、言語、性愛感情について本質看取の方法を駆使して解説していく。一読、非常に分かり易く、心身問題、ことに人間の「死」の意味について、これまでのモヤモヤした思いが払拭されていく印象を持つ。講座「人間学アカデミー」での講義をまとめたもの。2003年刊。2022/07/24
KakeruA
1
著者も触れているが、恋愛と身体性について論じられたものではない。哲学と思想を振り返りながら、身体と行為を結ぶ情緒について論じ、不可分な身体の限界性を乗り越えることは、他者を恋して(共同体として)乗り越えるか、自己愛(新たな自己の発見)による陶酔によって乗り越えるかとまとめる。西田の行為的直感を引き合いに出した説明が明快であった。2013/07/23
biblos
0
人間と人間の関係と,言葉・性愛などの観点から哲学的に解説している.関係性やコミニュケーションを改めて考えさせられた.2012/11/11
Tomo
0
文章は読みやすいけど、やっぱり、哲学は難解。あんまり理解できなかった。少しだけ、芥川龍之介と太宰治の恋愛についての考え方の違いに触れていて(ほんの数行ですが・・)そこだけは、わかりやすかったです。2012/09/03
Jun
0
「なぜ私がセザンヌの絵に感動したかを理解することはできません。脳のシナプスにおいて興奮が伝達さてたことが分かったとしても、それは感動した根拠、理由ではありません。ただの並列関係で、因果関係ではないからです」2021/10/10




