内容説明
「不良債権がビンの栓のようになっているから、これを取り除けば貸し渋りは解消される」―こんな言説が跋扈している。しかし実際には、不良債権処理が進めば進むほど、自己資本比率が悪化するので、金融機関は貸し渋り・貸し剥がしをせざるを得ない。さらに、ペイオフ凍結解除を錦の御旗に、金融庁が中小金融機関をいくつも破たんに追い込むなど、金融政策は迷走を続けるばかりだ。バブルのツケを中小金融機関・中小企業に負わせるいまのやり方を変えさせる手立てはないのか。金融迷走の実態を明らかにし、「金融アセスメント法」など、経済再生のための具体的手立てを提唱する。
目次
プロローグ 静かな不況
第1章 本当に日本銀行が悪いのか―日銀批判で隠蔽される真実
第2章 不良債権処理はデフレ対策なのか―銀行貸出が増えない本当の理由
第3章 「不況の連鎖」つくる金融行政―ペイオフ解禁とマニュアル行政の愚
第4章 金融機関に対する新たな評価システム―「金融アセスメント法」とは何か
エピローグ 多元的な社会へ
著者等紹介
山口義行[ヤマグチヨシユキ]
1951年名古屋市生まれ。立教大学大学院修了。東邦学園短期大学専任講師、名城大学商学部専任講師を経て、93年立教大学経済学部助教授、2001年4月より同教授。専門は金融論。中小企業の立場からの金融のあり方等に関して様々なメディアで積極的な発言を続けている
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
KAZOO
92
かなり前の本ですが、この本はかなり常識を覆すような内容が多く書かれています。副題にも書かれていますが、不良債権処理が必ずしも景気回復を呼び込むことにはならないことを論じています。この時代にはもうすでに、インフレターゲットということをいわれていたようです。現在は昔できなかったことを後追いでやっているような感じです。いい本だと思います。頭の再整理になります。2016/04/28
佐島楓
17
インフレターゲット論に疑問を呈し、不良債権処理はデフレ対策にならないと切って捨てる、先入観を壊してくれた本。日本がたとえばアメリカに比べリターンマッチができない国である、中小企業にとって非常に冷たい、などシビアな意見も多く参考になるところも多かった。2013/08/15
Z
3
今まで読んだ金融、金融政策の新書のなかで、一番いいと思った。量的緩和言ってる人間の中に、マネタリスト、貨幣にもセイの法則(商品を作れば売れる、貨幣を刷れば貸し出す)適用している人間、アメリカケインジアン(雇用を作ることの意義を認め、現実に貨幣需要があると判断し、彼らに金を届かせるため、日銀批判や市場の期待等様々な心理的効果も含めあらゆる手段とる人間)等がいるが、前者は論外として後者はマクロな視点にたちすぎている。借り手(大企業はある程度信頼があるため借金に苦労しないとみなし中小企業に焦点を当てる)や貸し手2016/04/24
Ironyuc
2
マイナス金利が騒がれてる昨今だけど、これを読むと日銀政策とか政府の財政政策とかの肝心なところがわかるようになる。難しくない、わけじゃないけど、良心的なむずかしさだよ。素人でも頑張れば読み通せるし、大事な知識も身に付けられるから。毎日のニュースをちょっとだけ鋭い視点で見れる、「デキる一般ピーポー」への入門書(笑)2016/02/19