内容説明
一九世紀半ば以降に形成される近代アジア市場は、西欧資本主義による閉鎖的アジアの開放の結果とされてきた。けれども市場を実際に機能させたのは、すでに形づくられていた東アジアと東南アジアという二つの自律的な経済圏であり、中国大陸と太平洋を舞台に展開された多様な流通形態だった。香港はそこで、中継都市としての役割を歴史的に担ってきたのである。返還を目前にして、過去に支配的だった地域秩序に回帰しつつある香港の現実とその背景を、アジア史の中にたどる。
目次
第1章 香港と私―南からの中国像を求めて
第2章 香港と日本―補完し合う歴史モデル
第3章 アジアの中の日本―近代日本とアジア・ネットワーク
第4章 一国多制度の試み―一国二制度下の香港
第5章 香港後背地の形成―その地政的位置
第6章 移民と華僑―為替送金ネットワーク
第7章 香港のタイパン―ジャーディン・マセソン商会の歴史
第8章 アジアの金融センター―ネットワーク都市の役割
第9章 新たな香港モデルに向けて―多層型経済社会の運用
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
残留農薬
1
返還直前に濱下先生の書かれたこの本を読んで、そういえば日本語で書かれた香港通史の本って全然無いな…と思った。やはり、流行りは90年代に過ぎちゃってるからなのかな…2015/07/27
yagian
0
意外と日本語の香港の通史に関する本が見つからない。この本は、興味深い視点は提示してくれるのだが、結論まで書かれていないのでもどかしい思いをする。ジャーディン・マセソン商会と香港上海銀行(HSBC)の歴史を追ってみたいと思った。2015/07/07
ニルコア
0
返還前の1996年に書かれた、香港の国際的金融ネットワークについての概説書。内容がほぼ金融関連に費やされており、歴史や政治、社会についての言及は乏しい。これはこれで意義のある本だと思うが、自分が求めていたものではなかった。他に香港に関する良書があると良いのだが…2014/09/29
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