出版社内容情報
なみはずれて気前のいいアテネの貴族タイモンをとりまく人間模様。痛烈な人間不信と憎悪、カネ本位の社会を容赦なく描いたきわめて現代的な問題作。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ケイ
126
リア王しかり、タイモンは自業自得だろう。金目当てに彼に群がる人達が勿論悪いのだが、聴くべき忠告に耳を傾けず、正しい隣人が分かったあとも感謝せずに勝手に世捨て人になっている。アルシバイアディーズのように物を見れないものか。と、読んでしまえば身も蓋もないので、哲学のギリシャから学んでみようとすれば「友人は気前の良さからは生まれない、真の友は苦言を呈する人」というところか。頭では分かっていても、実生活にあてはめてみるのは難しい。2022/02/20
YO)))
35
「金の切れ目が縁の切れ目」をエクストリームに寓話化した話しで、後半人間不信に陥ったタイモンが人類をディスり尽くす罵倒台詞のダーティなグルーヴが凄い。しかし元を辿れば、金持ちの間は見境なく湯水の様に使うわ、森に引きこもってからは見つけた金貨を誰彼かまわずくれてやるわで、タイモンが最後までお金の価値について寸毫も学ばないのが痛く、そんなことでは、友情と追従を(極めて難しいとは言い条)峻別できるはずもなかろうと思った。2018/02/06
鐵太郎
25
舞台となるのは古代のアテネですが、むろんエリザベス朝に生きたシェイクスピアの「こんなモンだとみんな思ってるからいいんじゃない」的な世界。権勢並ぶ者なき大富豪にして鷹揚で気前がいいタイモンの物語。彼がいつの間にか財産を全部使い尽くし借金まみれに没落し、それまで彼をチヤホヤしていた友人たちが手の平を返してしまったことがメインなのですが、タイモンの狂乱ぶりがなんとなく不自然に思えます。リヤ王が下敷きになっているらしいけれど、あちらは元々猜疑心の強い傲慢な人であり、タイモンは少なくとも最初は「いい人」なのでねぇ。2024/06/28
歩月るな
17
やっと最新作に追いつきました。ミザントロープ・タイモンはそれまで嘲笑の対象として描かれるのが一般だったが、それに思想性と悲劇的な深みを与えたのがシェイクスピアの独自なところ」解説によるとそうなんですって。『クリスマス・キャロル』も穿った見方ができる様になる。だがまあ我々は『杜子春』を読まされているのだし地獄に落ちたら『蜘蛛の糸』もある。「瑞々しい処女たちよ、今すぐ男どもの公衆便所に変わってしまえ」などタイモンの呪詛は流石の現代的な表現。「無謀な断罪」へと走るタイモンのセリフは、だからこそ、実に清々しい。2017/11/17
ヴィオラ
11
「淡い焔(青白い炎)読書会」の副読本として。 「最後の晩餐」絡みの記述もあるとおり、これは「裏切り」の物語か? 誰かの何かを掠め取ってしまう事、その何かが物理的なものに限らないってことに、思いが至らない人が多すぎる(自戒も込めて なんか纏まりがなくて、未完ではないか?という説にも自然にうなずけた2019/06/11