ちくま文庫
テス〈下〉

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  • サイズ 文庫判/ページ数 429p/高さ 15cm
  • 商品コード 9784480039873
  • NDC分類 933
  • Cコード C0197

内容説明

“宿命の男”アレックの手を逃れ、遠い酪農場に職を得て傷心を癒す美貌の娘テス。だが、そこで出会った牧師の息子エンジェルとの激しく一途な恋は、再びテスの運命を大きく狂わせて行く。結婚式の当夜、アレックとの過去を打ち明けられたエンジェルの蒼白な顔貌。ショックを受けたエンジェルは、単身ブラジルへと旅立つ。残されたテスの苦悩。そして、またもやアレックとの思いがけない出会い…世界は盲目的な運命によって支配され、個々の人間の幸不幸には全く無関心であるのか―不条理を鋭く見つめる20世紀文学の先駆作。

著者等紹介

ハーディ,トマス[ハーディ,トマス][Hardy,Thomas]
(1840-1928)。小説家、詩人。イギリスの南西部ドーチェスター近郊の農村に生まれる。ヴィクトリア朝リアリズム小説を大成すると共に、不条理な感覚や、象徴主義的、表現主義的な手法で、20世紀小説の先駆となった。近年は詩人としての評価も高まっている

井出弘之[イデヒロユキ]
1936年生まれ。東京都立大学名誉教授。英文学専攻(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。

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感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

NAO

59
テスは、あまりにも、人の言葉を信じすぎたのだろうか。トリンガム牧師の半ば冗談ともとれる言葉を真に受けてしまったテス。エンジェルの罪を自分が許したように、エンジェルもまた自分の罪を許してくれるかもしれないと思ってしまったテス。こういう境遇に陥った女性が幸せになることなどあり得ない時代だったから、この展開は当時では当然のことだったのなのかもしれない。だから、これは教訓的な話なのかもしれないが、こういう女性を作ってしまうのは男性自身なのだということを、男たちはちゃんと分かっていたのだろうか。 2017/02/14

たまきら

31
下巻は非常に読みごたえがあった。親にも、唯一愛した男性にも理解してもらえなかった女性の末路は本当につらいものだったが、利他的な、家族のために自分の心を抑え込む女子の姿に古今東西不変なものを感じた。そして、自分の問題を巧みに彼女の罪にしようとする身勝手な男の言葉も不変。「スカートなんかはくから痴漢に遭うんだろ」みたいな。あまりにも若く未熟であったがために愛している女性を失う男の末路を読んでみたかったなあ。2020/02/02

Miyoshi Hirotaka

19
資本主義の原動力となったプロテスタントの倫理観は、善行も悪行も救済とは無関係で、誰が救われるかは予め定められているという無慈悲な法則に由来する。救われないかもしれない不安を打ち消す行動が世俗での禁欲や勤勉に昇華。善因善果という仏教の観念とは真逆。大いなる力が定めた計画は寸分も狂わずに作用し続け、自らに課した使命への忠実さや周囲の期待により苦境に追い込こまれ、善意の救いの手や偶然の出来事でさえ救いに結びつかない。一方、真の愛は不滅で死と一体不可分。この世で実を結ばなかったとしても死により再び芽生え実を結ぶ。2021/04/30

noémi

11
あまりに面白かったので、あっという間に読んでしまった。エンジェルの怒りはあまりに身勝手。ダブルスタンダードもいいとこ。自分の罪は赦されて女の罪は赦されないの?ただ、これもその頃には当たり前だったのだろう。まっとうな女はテスのようなことがあってはならないことだったからだ。今日的な目で見ると、エンジェルよりもアレックのほうがよほど夫として適任だと思うけど。普通だったら、テスみたいな身分の低い女と結婚なんて考えもしないんだし。なんだかアレックが気の毒。だがテスへのエンジェルへの愛は頑固で一途で。悲劇的な最期。2012/02/22

9
すごかった。彼女の無垢な愛情は労苦の中で純度を増して、人の身には抱えきれないものになっていく。エンジェルのお坊っちゃまらしい純粋な視野の狭さ、テスの哀れな献身、アレックの欲望。思い返せば牧師の一言から、全てがこのラストシーンを必然にしたのだという、重い説得力がありました。印象深い箇所はたくさんありますが、終盤の逃避行の最中、空き屋敷で一時まどろむ二人をそっと見逃す老婆のシークエンスがはっとするほど美しくて、一番好きです。2012/06/25

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