内容説明
友達なし、恋人なし、お金もなし。コロナ禍で家から出られない一人暮らしの大学生・瀬戸杏奈。ある晩、彼女に伝説のハリウッドスターから電話がかかってきて―!?ふたりの女性の孤独が時を超えてマジカルに交錯する、運命突破系青春小説!
著者等紹介
山内マリコ[ヤマウチマリコ]
1980年富山県生まれ。2008年に「女による女のためのR‐18文学賞」読者賞を受賞。12年、受賞作を含む連作短編集『ここは退屈迎えに来て』を刊行してデビュー(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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Ikutan
66
大学に通うために上京し、ひとり暮らしを始めたと同時にコロナ禍に突入。入学式は中止、授業は全てオンライン、バイトもできず、孤独で自堕落な杏奈は、インスタで知ったマリリン・モンローに夢中になっていたところ、そのマリリンから電話が。今回はファンタジー?と思ったらそれは前半だけ。後半は、マリリン・モンローを取り上げた杏奈の卒論を通して″セックス·シンボル″ではなく″フェミニスト·アイコン″であるマリリンの真の姿が描かれる。いやぁ、知らなかったし、考えたこともなかった。山内さんの目の付け所に拍手。杏奈の成長も良き。2024/08/01
ひめか*
57
大学生になって上京してすぐコロナ禍に入った杏奈。実家から持ち出したプリンセス・テレフォンでマリリン・モンローと繋がって…コロナ禍の学生ってこんな感じだったんだなと追体験できたようだった。私も社会学部だったので、学生たちの持ち寄るテーマや議論に近いものを感じて(卒論は本当に好きなことで良いので楽しかった)懐かしく、どれも興味深かった。杏奈はマリリンに救われて興味を持ち、卒論をマリリンの話題にした。フェミニズム、ジェンダー、セクハラなど複雑な社会問題を扱いながらも、マリリンのおかげかポップな印象で読みやすい。2025/01/22
kyokyokyo3201
51
まずはコロナ禍に大学生活を送る杏奈の不安と孤独を思った。そんな杏奈が出会うのはマリリンモンロー。読みながら私自身の中でもセックスシンボルの代表の様なマリリンに対する認識がどんどん変化していった。そして、マリリンへの認識が変化するにつれ杏奈自身も強く逞しくなっていく様子は気持ちの良いものだった。2024/12/05
けいぴ
48
コロナ禍と大学生活が重なり、孤独感を抱く女子学生の瀬戸杏奈にマリリンから電話がかかってくる。それがきっかけとなり、ジェンダーについて学んでいくという話。コロナウィルスという未知なものが世界に広まったのだから、マリリンから電話がかかってきても不思議はないとばかりに、マリリンを降臨させてしまったところがひっかかるなぁ。2024/08/19
竹園和明
45
書評等でしっかりした論理を展開し、ユーミン本では的確な音楽分析と関係者の声を入念に拾っていた著者。本作はマリリンモンローを題材に、イメージで人を判断する事の危うさ、性差別の罪深さを説く。主人公杏奈はマリリンの不遇時代からスターになるまでを調べる過程で、商品として扱われる事に不満を抱いていた事を知る。その気付きが、コロナ禍でダルい毎日を送る杏奈の意識を変えていく。能天気な会話や呟きが可笑しい一方で、伝えたいメッセージを詰め込み過ぎな印象も。だが本作は、著者の今後の方向性を示唆する分水嶺的作品かも知れない 2024/06/13