内容説明
橋板の貧民窟・岩の坂で育った社会派ルポライターが綴る、壮絶で切ない、怒涛のような少年時代の思い出。木賃宿・長屋の住人。梅毒で鼻が無い“フガフガのおばさん”、正体不明のインテリ「ゴライ博士」、ヒロポン中毒のマアちゃん、初恋のパンパンガール…。強靱で、悲惨で、温かで、そして何より自由だった戦中戦後の「東京スラム」を、深い郷愁を込めて描く。
目次
ハギワラの受難
わが町・岩の坂
赤犬を食った男たち
記録のなかの岩の坂
晩年の宿場町
「番場の忠太郎」
わが母の出自
東条のバカヤロー
竹馬と石福とハギワラ
天女の舞いおりた葬式〔ほか〕
著者等紹介
小板橋二郎[コイタバシジロウ]
1938年東京都板橋区・岩の坂生まれ。都立上野忍ヶ岡高校定時制卒。さまざまな職業を転々としたのち、編集者、週刊誌記者を経て、フリーランス・ジャーナリスト
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感想・レビュー
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yoshida
119
戦前、戦後の板橋の貧民窟である岩の坂。現在はその面影はない。著者自身が育った岩の坂の人々、生活を回顧し記録した作品。なかなかに衝撃的な内容である。しかし暗くなりすぎることはない。当時の建物のイメージ図や、草間八十雄氏の著者からの戦前の板橋区役所の住民調査カードが圧倒させる。職業も様々。手相見、按摩、定斎屋、飴屋等々。様々に生計をたてていたことが分かる。敗戦後の食料難は貧民窟だけでなく、空襲で孤児になった浮浪児も襲う。著者の母の明るさ、楽天性に感嘆もする。あの頃の日本に存在した様々な人々の生がここにある。2020/01/23
みゆき
3
戦前・戦時中・戦後と筆者が引っ越しを繰り返すこともあり、自分が地理に疎いこともあり、分かりにくいところもありましたが、明治・昭和の混乱や人びとのたくましさ(繊細さ?)を垣間見ることができた。2016/07/30
今庄和恵@マチカドホケン室/コネクトロン
3
スラムに一生いる人はいない、スラムは病院、なるほどねー。弱い人こそ人に優しい。強さだけが美徳とされる場というのはやはり暴力なのだわ。優しい場所は寛容だ。強さを求める場は不寛容だ。2014/12/05
おにぎり
3
『古き良き』という言葉は、己に何も誇る点の無い大人が安易に持ち出す戯言だと思っていたが、ここにあるのは確かに古き良きとしか言いようの無い価値観を持った日本の姿だった。いやぁやっぱ本は筆者の人格だわあ。スラムの話でも心晴れやかな読後感。2011/12/28
補充兵
2
近所の兄ちゃんに頼まれてヒロポンを買いに行く話などは興味深い。スラムには働き盛りの男性がいないという指摘はもしかしたら間違っているかもしれないがはっとさせられた。2015/11/25