ちくま文庫
獲物の分け前

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  • サイズ 文庫判/ページ数 459p/高さ 15cm
  • 商品コード 9784480039484
  • NDC分類 953
  • Cコード C0197

内容説明

兄を頼って南仏からパリに上ったアリスティッド・サカールは、オスマン計画によるパリ大改造に乗じて不動産投機に着目、巨万の富を得ようと目論み激烈な戦いを開始する。修道院から出るまぎわに男と過ちを犯した美貌のルネを、サカールは金目当てで妻に迎えるが、やがてルネは先妻の子マクシムと官能的な不倫愛を深めてゆくのだった…。第二帝政期の華やかな建築・美術・風俗を背景にくり広げられる壮麗なドラマを、鮮烈に描き切ったゾラの傑作小説。

著者等紹介

ゾラ,エミール[ゾラ,エミール][Zola,´Emile]
1840‐1902。自然主義文学の第一人者。1860年代半ばから『ニノンへのコント』、『クロードの告白』で本格的に文筆活動をはじめ、71年から93年まで『ルーゴン・マカール』叢書全20巻を次々と出版した。文学評論や美術評論も数多く発表、『実験小説論』やマネ擁護でも知られる。また、ドレフュス事件ではドレフュスの無実を訴えて論陣を張った

中井敦子[ナカイアツコ]
京都大学大学院文学研究科博士課程修了、パリ第7大学博士。現在、同志社大学言語文化教育研究センター教授。専門は19世紀フランス文学
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。

感想・レビュー

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syaori

26
ナポレオン三世の時代。「帝政の大々的狩猟」、オスマンのパリ大改造の『獲物の分け前』を巡る人々の物語。アリスティッドと彼の後妻ルネを中心に描かれる、土地と金の錬金術に踊る人々の狂乱は、バブルなどを彷彿とさせどこか今日的な風景にも思われます。また社交界の華であったルネはこの狂乱とその行く先を象徴する存在のように思われました。「彼女の情熱のままに共に生きることを拒んだ」義理の息子と彼女を「搾取した」夫の間で「くたくたになって汚れ」た贅沢、それが彼女。華やかな倦怠と頽廃とに彩られた生活のなんと空虚だったことか。2016/08/30

松本直哉

25
ルーゴン・マカール叢書を読むたびにもつ違和感は、人物を描くのに遺伝の影響を説明するところ。ちょうど夢の奥底に欲望があると説明するフロイトと同じように、人間に意味あるいは必然性を与えずにいられないのだろうか。人間はもっと無意味で不合理ではなかろうか。親に似ていると人から言われるのは嫌なものだ。親に似まいとするとき初めて人は親から自立してその人らしくなるのではなかろうか。とはいえ、話そのものは面白くて、夫の連れ子マクシムに恋してしまう人妻ルネについつい引き込まれてしまうのですが。2020/06/25

ラウリスタ~

19
やはり若き継母ルネと、早熟な美少年マクシムとの恋愛物語が面白い。ブーローニュの森を馬車で散歩する有名なシーン(ありとあらゆる馬車の車種が出てくる)から始まり、最後で同じシーンがただし隣にマクシムなしで展開される。暖炉の火を匠の技でイジりながら交渉するアリスティッドは、ヴィーナスの醜い夫ウルカヌスみたいだし、そうするとマクシムのMのマルスのMかとも思える。そうかと思えば、悪いのはこの女ですとルネを父親に突き出すマクシムは、アダムが神の前でエバに罪をなすりつけるようだ。フェードル含め神話が重なりあう。2016/12/30

ラウリスタ~

15
今まで読んだゾラの中でも一、二を争うほどに面白い。幹線道路が通る場所をあらかじめ知り、その土地の値段を吊り上げ莫大な賠償金をせしめる父親と、その美しい後妻(一番最初の金ヅルでもある)とただならぬ関係になる美貌の息子。ヒロイン、ルネを中心にパリの有象無象が竜巻のように飛び交う。レストランの個室でのシーンは、当然というべきか、新聞連載の時にはその前でカットされていたそう。温室では珍奇な植物たちが催淫剤としてルネに働きかける。叢書2作目にしてここまで書いてしまっていたのか。2016/07/26

ろべると

2
ルーゴン・マッカール叢書の第二作。ナポレオン三世の治世下、パリ再開発の裏で土地転売で成り上がるアリステッド。前妻との子マクシムとの愛欲に溺れていくルネ。パリの狂騒の中で正常心を失っていく、バラバラの家族。破局を迎えた後、冒頭と同じブーローニュの森を馬車から眺めるルネの胸中たるや、いかばかりか。ゾラは人間模様の暗部を残酷にえぐり出して、余すところがない。2021/06/01

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