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ちくま文庫
晩夏〈上〉

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  • サイズ 文庫判/ページ数 508p/高さ 15cm
  • 商品コード 9784480039446
  • NDC分類 943
  • Cコード C0197

内容説明

遠く緑の葉陰に教会の塔が見える。めざすロールベルクの村までは、あともう少し―だが、先ほどから急速に黒い雲が拡がり始め、今にも雷雨の来そうな空模様になった。旅の青年は、街道を離れ、雨宿りを求めて、丘の上の屋敷へ続く道を登り始める。青年の運命は、この時から、大きく変わって行くのも知らずに…。オーストリア・アルプス山麓に美しく建つ「薔薇の家」を舞台に、物語は、ゆっくりと、急ぐことなく、静かに進んで行く。やがて押し寄せてくる激しく深い感動…。トーマス・マンが「世界文学のなかでも最も奥深く、最も内密な大胆さを持ち、最も不思議な感動をあたえる―」と評した作家の最高傑作。

著者等紹介

シュティフター,アーダルベルト[シュティフター,アーダルベルト][Stifter,Adalbert]
1805‐1868。オーストリアの作家。ボヘミアのオーバープラーン(現チェコ、ホルニー・プラナー)に生まれる。ウィーン大学に在籍。数学・物理学・天文学を好んで聴講。初め画家を志すが「コンドル」の成功で文筆活動に入る。人間を、自然との関わりの中で描く独特な作品を残す

藤村宏[フジムラヒロシ]
1912‐1999。函館生まれ。東京大学独文科卒業。東京大学教授、日本大学教授を歴任。東京大学名誉教授。永くシュティフターの研究に携わる
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

ケイ

116
お手本となるような家族。躾に厳しいが、段階に応じて子供の自主性を育てる父、父に背かず子供に優しい母、勉学だけでなく運動にも励む兄妹。特に語り手の、真面目に課題をこなし、生活は慎ましく、勉学にも優れているのに芸術にも高い興味を持つ生き方。危ないことには手を出さないのだが、趣味の登山時の天候の急変により、雨宿りをしようとしたことで知り合う素敵な家族。ここで物語が進むべき道を見つける。わたしが20代までであれば素直に感動し、この青年の成長をハラハラと見守れただろうに。ありえないと思いつつ、後半も気になる。2019/05/03

syaori

45
節度と規律と愛情あふれる家庭で育った「私」。彼と薔薇の家の主人との夏ごとの交流が描かれます。物語は非常にゆっくり進みますが、その邸の調度や装飾の趣味のよさ、そして邸の主人をはじめとする人々との交際によって彼が美的にも人間的にも洗練され成長してゆくのを見るのは何と気持ちが良いことでしょう。「晩夏」とは、薔薇の家の主人や彼の父をはじめ人生の秋を迎えようとしている、気取らず自然に彼を導く人々のことをも示しているように思うのですが、彼らについて知らないことばかり。彼の成長と敬愛すべき彼らについて考えながら下巻へ。2018/02/19

Hepatica nobilis

10
大事な小説家を一人選ぶとなればシュティフターと言うかもしれない。この長編は最初挫折したのだが、たしか3回目にしてようやく読みとおせた。恵まれた、進路も定めていない青年が偶然見つけた邸宅に出入りするようになり、そこに理想の生活を見出すというただそれだけの筋書き。その「退屈さ」は、むしろ作者が起伏に富んだ物語を頑なに拒んでいるようで、卑俗な言葉を使わずそのような人物も出てこない。シュティフターは作品世界を静かに丹精込めて描く。

7
オーストリアの山麓にたたずむ「薔薇の家」に、読者は何度も訪れ滞在することになる。緻密にどこまでも続く自然と家の描写、賛美。夏の盛りから晩夏まで、この家と穀物畑と庭を散歩する静かな喜び。大理石の床を傷つけないよう布の靴で歩く感触が忘れられない。

timeturner

5
理想主義的すぎてリアリティがないし、話はぜんぜん先に進まないしで、とにかく古いタイプの小説なのに、これほど心地よく読めるのはなぜ? 急がず下巻へ。2019/07/20

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