内容説明
「哲人コミさん」とも呼ばれていた通り、田中小実昌は本をよく読み、ことばに厳しい人でもありました。ミステリの翻訳をするにも、いきいきとした言い回しを生み出す一方で、英語の文脈の中にあるコトバの意味を損ねぬままに日本語に移そうと苦心惨澹していたのです。本巻では、コトバとの接し方とミステリ翻訳の舞台裏、それから書評を盛り込みました。
目次
第1章 コトバと生きる(言葉の顔;たとえば昔は ほか)
第2章 翻訳ウラおもて(さいしょの訳;ひさしぶりの翻訳 ほか)
第3章 コミマサ流ミステリ案内(だらしない探偵;マイルズ・アーチャーはどこで殺されたか ほか)
第4章 訳者あとがき大全(『女は待たぬ』(A・A・フェア)
『通り魔』『レディ・キラー』(エド・マクベイン)、『うまい汁』『梟はまばたきしない』『蝙蝠は夕方に飛ぶ』『倍額保険』(A・A・フェア) ほか)
第5章 コミマサが読む(タメにならぬ読書の奨め;人間的でもこまる ほか)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
踊る猫
22
やっぱりコミさんはこうでなくちゃ。前巻は女性の話ばかりで脂ギッシュな一面を見せたコミさんだったが、この巻では哲学を語り自分の翻訳を語り、シリアスだ。でも、別人になったわけではない。女性に対するフェティッシュなこだわりは形を変えて、概念や「コトバ」に対するフェティッシュなこだわりとして結実してもいる。一体この単語はなにを意味しているのか? というコミュニケーションの謎の中で迷う弱っちい自分を包み隠さず、こちらに見せているのだ。そんなコミさんの情けない姿は、しかしなかなか真似しようと思ってもできるものではない2020/07/04
モーリス
0
ふつう