内容説明
1989年に没した後も、なお衰えぬ人気を誇る異能の男。己をめぐる人間関係を醒めた眼でつかみ出す純文学作家、色川武大。もうひとつの顔は、ギャンブルに命を削る男たちを描き続けた無頼の文士、阿佐田哲也。このふたりの名前によるエッセイ・コレクション、ついに刊行開始!第1巻では、賭場での身の処し方など、アウトローとして生きるための気構えを伝える。
目次
最後の無頼漢―つかこうへいによるインタビュー
1 渡世(さて、なにから―の章;男女共学じゃないから―の章;九勝六敗を狙え―の章 ほか)
2 勝負(狼諸氏に;焼跡ギャンブル時代;第四章(『Aクラス麻雀』「基本的な十章」より三篇) ほか)
3 文学(「離婚」と直木賞;逸すべからざる短篇;文体についてかどうかわからない ほか)
著者等紹介
色川武大[イロカワタケヒロ]
1929年東京生まれ。東京市立三中中退。戦後の数年間、賭場を渡り歩く。雑誌編集を経て、’61年「黒い布」で中央公論新人賞を受賞。’77年『怪しい来客簿』で泉鏡花賞、’78年『離婚』で直木賞、’81年「百」で川端康成賞をそれぞれ受賞する。’88年には『狂人日記』で読売文学賞を受賞した。1989年4月没
大庭萱朗[オオバカヤアキ]
1962年北海道生まれ。出版社勤務を経て、文芸評論家・フリー編集者として活躍中
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
KAZOO
89
色川武大名義と阿佐田哲也名義のエッセイをまとめたもので、主にかけ事などについての話が数多く集められています。戦後の闇市が並ぶ中での書き手の人生がどのような経験をしてきたのかがよくわかる気がしました。様々な賭け事の話が多いのですが最後近くでは文学などについての話も収められています。2024/07/24
ホークス
37
色川武大=阿佐田哲也のエッセイ集。善人らしき人が泣き笑いする小説は苦手だけど、悪人が仏心につまづく話は読める。空気から落伍しがちな私には、その方が真実っぽい。阿佐田氏は戦争前後のキツい貧困とバクチの世界を知っている。お手軽な善とか正に対する健全な絶望感、淡々とした語りに潜む信念を感じる。吉行淳之介との赤線問答も、冷静さによって悲惨を際立たせている。勝負事の話では「人の業」を様々に炙り出す。麻雀、チンチロリン、競輪など種目も幅広い。出てくる奇人変人がとてもリアルで、誰の中にでも居るんだと気づかせてくれる。2021/09/11
シガー&シュガー
15
賭け事、色街、終戦直後の街、そして文学についてをちょっぴり、のエッセイ&対談集。麻雀・競馬・競輪・将棋・文学・昔の友達、何を語らせても読ませます。短いエッセイの中に物語が含まれていることも多く、戦時中の花札友達だった「びぃ十三」の話はちょっとした短編。吉行淳之介と色街について対談しているけれど阿佐田哲也の語りのほうが興味深いのもすごい。これだけ書けるまでに(本人の希望には関係なく)何をどれだけ投資したのかを思うと、阿佐田哲也の言うことが普通人に早々理解できるはずもなく、それゆえに何度読んでも面白いのです。2016/02/19
こすもす
7
博打 賭け事と言えば悪いイメージばかり この世界は奥が深すぎて一旦嵌ってしまったら抜け出せないのだろうな~と感じました。親族にそういう人がいたら決して近づかないだろうなと思いますね(笑)破天荒であればあるほど話しは面白いけれど現実的にはねぇ~2013/09/26
showgunn
5
個人的には色川武大はむしろ小説よりエッセイの方が通底した視点が感じられますね。 吉行淳之介との対談はあまり他で書いてないことについてだったので特に面白かった。2016/03/02