内容説明
マンスフィールドの短篇小説は、心の微妙なうごきを詩情あふれる散文で生き生きと描き出す。日常をかすめて通る死の影に、揺れる少女の心。幸福の中の倦怠。再会した男と女のかけひき…。それまでの作家たちを超え、新たな世界を切りひらいた彼女の短篇は、今後も古びることなく読み継がれていくことだろう。代表作とされる「ガーデン・パーティー」ほか全14作を、新訳・新編集で贈る。
著者等紹介
マンスフィールド,キャサリン[マンスフィールド,キャサリン][Mansfield,Katherine]
1888‐1923。ニュージーランドに輸入商の娘として生まれる。ロンドンに出てクイーンズカレッジに学ぶ。二人目の夫である文芸批評家J.M.マリと出会った頃から作品を発表。作品の主調をなすのは美と抒情と生の懊悩で、文学史に類例を持たない短篇を多く書いた。全短篇集は現在でも着実に版を重ねている。パリ近郊において34歳の若さで病没
西崎憲[ニシザキケン]
1955年青森県生まれ。英米文学翻訳家。アンソロジスト。作家
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
みつ
27
遠い昔、新潮文庫、岩波文庫で読んで以来のマンスフィールド。ほとんど筋は覚えておらず、穏やかでありながらどこかに陰影を帯びた生の断片の描かれ方のみが記憶にあった。代表作の『ガーデン・パーティー』は、幸福な日に忍び寄る「死」の影が明瞭に示される。『幸福』は「幸福過ぎる」(p72)とつぶやく主人公と取り巻く人物の何気ない言葉のやりとりが続きつつ、最後の登場人物同士の会話で反転。子供たちを描いた他の作品(『人形の家』が絶品)も含め、静穏な生のさなかにふとよぎる心の揺らぎを捉え、ここから短歌が生まれそうな気配が。2023/07/09
さっちゃん
11
詩のような小説、と解説にあったが私もマンスフィールドから受けた印象は詩人だった。奔放に迸るまま溢れてくる言葉。心に浮かぶ一瞬の微妙な感情を見事に捉えること。マンスフィールドにしかできない、彼女にしか書けない小説である。2015/05/17
くさてる
8
アンソロジイで何作か読んだことはある作家だけど、短編集で読むのは初めて。どれも端正で、美しい情景とそこに潜む人間心理の綾を描いて印象深い。しかしなんといっても「幸福」がすごい。怖くてはかなくて美しい。いろんな人に読ませてどう思うか感想を聞きたくなるような短篇だ。2014/06/18
ひろゆき
5
『ガーデンパーティー』マンスフィールドの代表作どころか、世界の短編小説の代表。誰もが幼いころから大なり小なり感じることを無駄なく描く。結末も優しいもののキリッとして、震える心への救いもあるが、でもありふれた解決はなにも押し付けがましく主張せず、なにものかをこちらににぶつけたままに。ために、読者に反芻を強い、記憶させる。『幸福』ありふれた幸せは俗物のパートナーによってもたらされている。感受性の豊かさが、その幸せの脆さを見抜いてしまう不幸。ほか、うーんと唸る短編集。2013/05/30
いなお
4
不穏/「ガーデン・パーティー」と「幸福」は別の短編集・アンソロジーでも読んだことがあるがやはり良い2016/02/02