内容説明
目の前にバスが止まれば、行く先がわからなくても乗ってしまう人、それがコミさん。すなわち、どんなときでも旅行中。どこへ行くにしても名所旧跡には目もくれず、人との語らい、そしておいしい食べものとお酒との出会いが無上の楽しみ。日本を、世界をあてどなくさまようコミマサ流旅行記を厳選して送る。
目次
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アジア
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オーストラリア
著者等紹介
田中小実昌[タナカコミマサ]
1925年東京生まれ。東京大学文学部哲学科中退。バーテン、香具師などを転々とする。H・チェイス、R・チャンドラー、C・ブラウンの名訳で知られる。「浪曲師朝日丸の話」「ミミのこと」で第80回直木賞、『ポロポロ』で第15回谷崎潤一郎賞を受賞。2000年2月アメリカで客死
大庭萱朗[オオバカヤアキ]
1962年北海道生まれ。出版社勤務を経て、文芸評論家・フリー編集者として活躍中
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
踊る猫
28
コミさんは相変わらずだ。お酒と女性、そして美味しい食べ物。それもご馳走ではなく、市井の人々が食べるごく普通の料理の中に旨いものを見出して、称揚する。人生の達人、と言ったら大袈裟だろうか。しかし、ここまで威張らないで地べたに足の着いた紀行が出来るインテリというのもなかなか居ない。言い淀むのがコミさんの良いところだと思うのだけれど、このエッセイ集でもそんなに見通しの良い紀行は書いておらず、行き当たりばったりの珍道中を繰り広げて、こちらを笑わせる。私自身バスが好きなので、バスへの不器用な偏愛もつい共感してしまう2019/11/28
勝浩1958
6
日本ならまだしも海外でバスが来たら行先も確認せずにひょいと飛び乗ってしまってほんとに大丈夫なのと言いたくなるような旅を続けるコミさんの哲学者でありヨイヨイノおじさんであるところがたまらなく素敵なのです。この本は『田中小実昌エッセイ・コレクション』第2巻”旅”編です。3巻とも私の行きつけの地元では知る人ぞ知る名居酒屋のご主人から頂いたものですがこのご主人がなんとなくコミさん然としているのです。夕方雨が上がったら飲みに出かけようかな。2016/02/20
イカ男
0
「ま、旅というものは、なにかを得にいくよりも、なにかをすてにいくようなものだろうが・・。」(P277)が胸に沁みた。2011/10/08