内容説明
身の毛もよだつ怪奇譚や、実録風怪異現象をエキゾティシズムと猟奇趣味の混合した耽美的な文体で描いた、橘外男。特異な経歴をもち、様々な職に就きながら小説の筆を取った異色作家の、「聖コルソ島復讐奇譚」「怪人シプリアノ」など「実話」と銘打ったグロテスクな海外怪異譚と、「蒲団」「逗子物語」などの日本的怪談10篇を収録。
著者等紹介
日下三蔵[クサカサンゾウ]
1968年神奈川県生まれ。出版社勤務を経て、ミステリ評論家・フリー編集者として活躍中
橘外男[タチバナソトオ]
1894(明治27)年石川県金沢市生まれ。軍人の父のもと厳しく育てられたが、素行不良で中学退学処分となり、北海道の叔父にあずけられた。21歳のとき罪を犯し刑務所に入る。出獄後上京、医科器機輸出業などさまざまな職業に就きながら小説の筆をとった。1938(昭和13)年、「ナリン殿下への回想」で、直木賞を受賞。戦中は満州に移住。戦後執筆を再開。1959(昭和34)年没
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感想・レビュー
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かわうそ
21
未開部族への偏見100%の語り手たちが不適切ワード連発でお送りする海外実話篇はまるでB級ホラー映画を観ているかのような爆笑に次ぐ爆笑。一転して正統派の怪談が続く日本怪談篇もとにかく怖い「蒲団」をはじめ良品ぞろい。これは充実の一冊。2014/12/19
ネムル
8
「蒲団」は夢にうなされそうな、実にいやないやな怪談。これはすごい。が、日本怪談編よりも安出のパルプ・フィクション感全開の世界怪奇実話編のが好きだったりする。むちゃくちゃでデタラメなはったりだけの作品群でしかないような気もするが、妙な熱気におされて夢中に読んでしまった。2022/08/14
はちくま
3
個人的に、「蒲団」は最も怖い怪談の一つだと思っているし、「逗子物語」は好きなジェントルゴーストストーリーのうちの一つなので、この名作選はお買い得。それにしても「蒲団」は淡々かつじめじめしつつも、えげつないなぁ。海外の秘境を舞台にした伝奇ものは、香山滋や久生十蘭も書いているけど、クールな二人に比べると橘さんはいろいろな意味でアツい。読みながら時々「そんなのアリ!?」とか「ちょっと待て!」とかついツッコんでしまうのもご愛嬌。2013/07/14
708
2
粘着質な語り口。グロテスクとロマンへの異様な執着。クセの強い作家ですが、面白いのなんのって。人獣混合や秘境物を集めた海外実話編、まとわりつくような怖気と情緒が入り交じった日本怪談編、ともに名品ぞろい。特に逗子物語、蒲団の2篇は絶品でした。2013/02/01
てっちゃん
1
海外実話篇より日本怪談篇の方が断然面白い。逗子に住んでいる者としては「逗子物語」のような怪談話があるのはなんだか嬉しい。2014/02/19