内容説明
該博な知識と彫琢を凝らした文章。現実と非現実のあわいの世界と人間の狂おしい心情を描く久生十蘭の世界。高等遊民の男と、非常な美しさをたたえた女性との数奇な運命を描いた「湖畔」「墓地展望亭」、驚くべき着想で架空の土地をリアルに描き出した「海豹島」「地底獣国」、戦後間もなく発表され代表作とされる「ハムレット」と、その原型となった「刺客」など、十蘭の魅力を網羅した一冊。
著者等紹介
久生十蘭[ヒサオジュウラン]
1902年北海道生まれ。本名阿部正雄。聖学院中卒後、新聞社に勤めつつ、演劇活動に傾倒。上京後、岸田国士に師事、29年演劇研究のため渡仏した。帰国後、明大文芸科講師を勤める傍ら、筆名で「新青年」に多彩な推理小説を発表。51年『鈴木主水』で直木賞受賞。53年国際短編小説コンクールで『母子像』が一等に当選、その実力を謳われた。1957年没
日下三蔵[クサカサンゾウ]
1968年神奈川県生まれ。出版社勤務を経て、ミステリ評論家・フリー編集者として活躍中
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
かわうそ
17
久生十蘭を一冊まとめて読むのは初だったけど、ミステリーから幻想小説、冒険小説までどの作品をとっても魅力的でこれから一気にはまりそう。「湖畔」「予言」「虹の橋」あたりが特によかった。2013/12/29
不見木 叫
16
「黒い手帳」・「湖畔」・「月光と硫酸」・「母子像」・「虹の橋」が私的ベストです。2024/08/09
ネムル
14
短編の精華とも究極とも、いくら褒めても足らないくらい。30~40ページほどの簡潔さで、飄々とユモレスカといった作品が好きで、本作なら「黒い手帳」だったり「月光と硫酸」だったりする。ベストは「湖畔」で、人が死んだの生きたのと間を飛び越える軽やかさが鮮やかで小気味よい。2012/07/12
マカロニ マカロン
10
個人の感想です:B。著者は1902~1957の戦前~戦後の短編小説が得意なミステリー作家。1951年直木賞受賞。本作に収録の『黒い手帳』『ハムレット』『湖畔』などを読むと、時代を感じさせる文体ではあるが、耽美的な独特の展開が面白かった。真相は殺人か自殺か、友情と裏切り等など本格的なミステリー小説あるいは怪奇小説となっている。このところラノベ的な推理小説を連続して読んできたが、半世紀前にはこんな小説もあったのかと対比できた。『ハムレット』とその原型作『刺客』を両方読むと、著者の小説手法が感じられて興味深い。2018/10/04
ヴィオラ
8
「海豹島」や「地底獣国」などなど、楽しい作品は多いんだけど、個人的にはイマイチ嵌らなかったかなぁ…2024/12/25
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