ちくま文庫<br> 十六夜橋

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ちくま文庫
十六夜橋

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  • サイズ 文庫判/ページ数 396p/高さ 15cm
  • 商品コード 9784480034854
  • NDC分類 913.6
  • Cコード C0193

内容説明

不知火(しらぬい)の海辺に暮す土木事業家の主とそれをとりまく三代の女たち。遊女、石工、船頭…人びとがあやなし紡ぎ出す物語は、うつつとまぼろし、生と死、そして恋の道行き―。第三回紫式部文学賞受賞作品。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

chanvesa

32
「守り袋の中から、青い錆のところどころ吹いているおおぶりの鈴をとり出して、綾の手に持たせた。一と晩だけ、と志乃は言った。『これはな、魂じゃから、失うてはなりませぬ。くれるとじゃなか、貸すとばえ』(199頁)」お糸と志乃をつなぐ魂、綾にもつながっていく。お糸や小夜が秋人・重左や仙次郎を愛し愛されるように、綾と三之助にもそんな芽生えがある。重層的な人とのつながりや、娼家の哀しさをたたえながらも深刻になりすぎず、幻想的で美しい場面が続く。石牟礼さんがこれまで描いてきたご自身や周りのことを昇華した素晴らしい作品。2023/01/04

シュシュ

30
先日読んだ『魂の秘境から』に載っていた石牟礼さんの水俣での思い出がモデルになっていると感じた。とてもよかった。石牟礼さんの祖母で、 盲人で精神的に不安定だった、おモカさま。家の近くに住んでいた遊女。遊女を刺してしまった少年。子どもの頃に見たハンセン病の人たち。その人たちに対する優しい気持ちがこの小説になった気がした。登場人物がそれぞれによかった。十六夜橋の場面では、この世でないところをさまよっているようだった。これは、おモカさまのような人が見ることのできる世界なのかもしれない。 2018/08/04

Sakie

15
この読み心地をなんと表現すればよいのか。言葉がやさしい。人の心がやさしい。人の生そのもので、決して楽しいことばかりではなく、どころか、辛い想いのためにあの世とのあわいに漂うような志乃の姿は痛々しく、見守る家族も心穏やかとは言い難い。それでもひとりひとりが地に足をつけ、儚い願いを抱いて暮らす様が、やわらかい方言と相まって、私を人懐かしく、祈るような心持ちにさせる。2016/07/10

しまゆう

6
径書房版.不知火にすまう、志乃を中心とした「生活」の話。会話を中心に当時の風俗を美しく描写しつつ話は現在と過去、人と人を行き来しながら進んでいく。ページを繰るにつれて、時間を縦糸に、人を横糸にして物語は美しい織物へと変貌を遂げていく。2015/12/12

あかつや

5
不知火海沿岸の土木事業者一家に繋がる女たちの生と死、そして恋の物語。この地域の言葉は私にとってとても親しいものだけど、それでも紡がれる言葉に幻惑されてしまう。登場人物のお志乃さまは病で夢と現の区別がつかなくなっているけど、小説の語りそのものもそれに引き込まれるように、過去と今、現実と非現実の境界が曖昧になって、さらに土地の伝承なんかもプラスされて、これはあれだね、南米文学。時間も空間も飛び越えて、現実に自然に入ってくる幻想はまさにマジックレアリズムの味わい。石牟礼道子の作品はもっと世界で読まれるべきだわ。2022/11/07

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