内容説明
本書は異界に深い係わりをもっていたと考えられる「人物」と、異界に属すると思われる「妖怪変化」たちの身元調査記録である。彼らが、表の歴史に正々堂々と姿を現すことは滅多になかったが、日本文化に極めて大きな影響を及ぼしたことは疑いない。「妖怪」たちの活躍と意味を考えることは、異界という想像力豊かな世界を生みだした、わたしたち日本人の心の歴史を大胆に読み解くことになる。
目次
スサノヲ―三界を旅する“異貌の神”
八岐大蛇―自然と土着民のシンボル
ヤマトタケル―白鳥に変身した悲劇の英雄
小子部栖軽―怪力・知力を備えた異界の主
聖徳太子―未来を語り伝える予言者
役小角―山民“呪術者集団”のリーダー
吉備真備―鬼から秘術を授けられた超人
空海―不死の姿で生き続ける名僧
菅原道真―神霊の両義性をもつ神の子
安倍晴明―陰陽師のシンボル的存在〔ほか〕
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ゲオルギオ・ハーン
22
妖怪や都市伝説の他、オカルト的な逸話を持つ偉人を40ほど紹介する一冊。民俗学の学者3名が分担して書いており、読んでいて面白いというか興味深いのは偉人の成功理由や伝承を書いた人々が根源に霊的な力の存在を推測する話や書物が昔は珍しくなかったことです。一部紹介すると信長の特異性やカリスマ性から実は出自が山民だったという噂話があったこと。陰陽道に関して吉備真備を祖とするのは陰陽師たちが陰陽道の箔付けとして遣唐使だった吉備真備が中国で学んだという話にしたかったからではと考察しているのはとても面白いと思いました。2021/07/23
乃木ひかり
13
丸善復刊フェアで見かけ購入。執筆陣が豪華すぎる。どうやら対談時期が昭和から平成へのタイミングだったらしく奇しくも現在と一致。伝説や伝承は新たに生まれるのだろうか。小松先生の河童の話をもう少し詳しく知りたい。2019/04/10
うえ
7
「宮田 現代の南方熊楠みたいなものがどう考えられるかですね」「鎌田 現代の妖怪としては南方熊楠、折口信夫、そして稲垣足穂なんか入れてみても面白い。彼こそ弥勒といいますか、現代の妖怪の一人ではないでしょうか」「小松 宗教者や学者のなかに捜していくのも面白い。想像力で異界をつくったり語ったりして、そういった世界に生きてしまう。宗教者は伝統的な宗教知識を使って異界と接触したり、自らを異人化していくケースが多いですね。本書でも取り上げた出口王仁三郎はその典型といえます。そして作家のなかにもいませんか」2020/03/05
眉毛ごもら
1
民俗学の大家達が異界とかかわりあいになった歴史上の人物(?)について紹介していく本。基本的に伝承ベースであり史実とは違うこともある。三十年前の本なので情報が古いところもあるけれどもそれはそれでその時代はそういう考えだったのだなぁと言う参考にはなる。口裂け女ねずみ男、アキラとナウシカ等の創作の人物から現代の異界を考えるという試みも面白い。あまり知らない人物もいたので調べてみよと思わせる。巻末に作者の対談と用語辞典があるのでなおよし。偽書と確定した東日流外三郡誌とかが引用でバッチリ載っていたので時代を感じる。2020/12/15
ノリピー
0
日本人の心象を代表する人物や妖怪が多数紹介されています。なぜかアキラやナウシカなども載せられているのが面白い。2014/11/22