内容説明
人間は不平等だ。悪いといおうが、いけないといおうが、事実だ。しかし現実がどうであろうとこの世に生まれた以上、あなたは幸福にならねば…。誤まった幸福観を正し、人間の本当の生き方とは何か、幸福とは何かを、平易な言葉で説いた刺激的な書。
目次
美醜について
ふたたび美醜について
自我について
宿命について
自由について
青春について
教養について
職業について
「女らしさ」ということ
母性〔ほか〕
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Y2K☮
40
女性誌に連載していたエッセイ。とはいえ内容は男にも通ずる。要は「楽園など無いよ」と。理想と現実の狭間で折り合いをつけるのが人生の本質。諦めるのではなく受け入れ、その上で今を楽しむ。快楽主義とは欲への耽溺ではなく、適度に楽しむ為に己の意志でコントロールすること。そこから「楽は苦の種」「束縛あってこその自由」と悟るべし。熱を冷却する水があって初めて鋼は強度を持つと。和と不和は表裏一体。願望が叶った瞬間からすでに幻滅は始まっている。そこで投げ出せば堂々巡り。シビアと前向きを混在させつつ、甘い夢想を断ち切る一冊。2017/07/26
yutaro sata
32
福田さんは、悲観しているのでも楽観しているのでもなく、なるべく嘘を吐かないように、徹底的に現実を見つめて常識的に物事を考えようとしているように思う。自由や宿命の話、戦後という喪失のなかでの態度、教養についてなど、主に前半部が良かったと思う。 後半部は、あれだけ鋭敏な福田さんでも、こういうお説教調の語りがいかに無効であるかに気がつかないものかしら、と思っていたら、あとがきでそのことに触れられていたので思わず笑ってしまった。前半部を読んでね、というような主旨のことが書いてある。2023/08/22
ももたろう
26
再読。前回と同様「美醜について」が興味深く読めた。自分の欠点・弱点から目をそらすのではなく、それを認める事が大事だよ、と。今回特に興味深かったのは「恋愛について」の部分。今は嫌になると簡単に別れてしまう時代。これは本当に良くない事だと切に思います。だからこそ、著者のような考え方を大事にしなければならないと強く思う。恋愛って、話しやすいテーマだからか、偉そうに自分の経験を語る人をよく見かける。こう言う教養ある人物の言葉をこそ、現代では大事にされなければとつくづく思います。もちろん、自分も含めて。以下、引用。2018/04/30
白義
22
どのような環境、時代や性格に生まれるかを人は自由には決められない。それは強固な「宿命」として人を縛り付け人生を規定する。そうしたものから生まれる不具合を除去するに、一つは社会公正の改善があるが、それすら時代により難易度に差がある。そこで著者はそうした宿命を前提として肯定しつつ、自己をコントロールし幸福となる術を説き、同時に安直に不幸を除去できると思う自由主義と快楽主義への懐疑を出していく。顔の美醜により人が判断される、というのは最も露骨にして端的なものであり、本書の主題を凝縮している2013/09/10
弥勒
16
福田恆存の幸福論は他の幸福論とはその根本において違う。他の幸福論が幸福になる方法を伝えるのにたいして、彼の幸福論は「幸福とはなんではないか」、さらにいへば、不幸に耐える術を教えてゐる。そうであればこそ、一見辛辣なことを言つてゐるやうに見えてもその底には現実と優しさがある。そして、現実に裏打ちされてゐるからこそ、幸福論といふ理想においても彼の場合は、私たちに現状を省みる視点を与へてくれるのである。2016/05/17