内容説明
詩人として、批評家として、思想家として、近年ますます重要度をましているボードレールのテクストを世界的学究の個人訳で集成。近代詩史上、つねに新しい輝きを放つ『悪の華』を中心とする韻文詩を一巻に収める。文学的香り高く、原文に忠実で読みやすい翻訳に、深い学殖が光る註解を付しておくる決定版訳詩集。
目次
悪の華(第二版)
漂着物
新・悪の華
悪の華(第二版)エピローグ草稿
悪の華(第二版・第三版)序文草稿
初期詩篇
著者等紹介
ボードレール,シャルル[ボードレール,シャルル][Baudelaire,Charles]
1821年パリに生まれる。するどい意識をもって、都市生活の生み出す新しい抒情を表現する。美術・文学・音楽にわたる批評家として、現代性への道を切り開く。1867年没し、モンパルナス墓地に埋葬された
阿部良雄[アベヨシオ]
1932年、東京生まれ。東京大学名誉教授。帝京平成大学教授。『ボードレール全集』で日仏翻訳文学賞、『シャルル・ボードレール―現代性の成立』で和辻哲郎文化賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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夜間飛行
70
最初の「祝福」という詩は呪われた詩人を産んだ母の恐れと憎しみから始まり、《讃えられてあれ、わが神よ、御身が苦患を与え給うのは/われらの穢れのもろもろを癒す、霊薬として》と激しく神に訴える。『悪の華』の基底に響く神への懺悔は詩集後半で悪魔への祈りに変っていく。詩人はそれを演じる事によって瀆聖の告解室を現前させるのだ。陶酔が倦怠に、憧れが悔恨に転じ、パリの闇を共同墓地の底まで下りてゆくしめやかな韻律に、遠い昔の異国の詩人とはいえ共感した。残虐性への嗜好や生々しく女体を象る詩など、なぜか昭和の匂いがして懐しい。2015/10/05
ロビン
25
フランスの大詩人ボードレールの全詩集。退廃や醜悪などのゴシックのイメージが横溢し、陶酔と倦怠の中で饒舌に歌いだされている。象徴派の曙と評されるが、ロマン派の残照をかなり感じさせる詩風であると思う。表現主義の巨星トラークルがボードレールを好きだったというのはわかるような気がした。ギンズバーグが公文書猥褻罪に問われたように公衆道徳良俗紊乱の罪で有罪になったボードレールであるが、詩と人生の間に距離や乖離がないというか、この背徳と狂熱の詩を破滅的な実人生で詩人自身がまさに「生きた」という所に凄みがあると感じた。2020/12/08
Takashi Takeuchi
13
新潮文庫版と併読。こちらちくま文庫版はボードレール研究の第一人者・阿部良雄氏翻訳だけあって解説、注釈がしっかりしていて分かりやすく読みやすい。ボードレールの世界観を掴むことができた。口惜しいのは自分の中に詩をしっかり染み込ませる感性が不足していること。感受性の豊な中学・高校生の頃に読んでいたら違ったかな。老後、時間のある時に繰り返し噛み締めて読めばもっと味わえるかな。2023/06/09
月
12
悪の華は、阿部良雄(再読)と堀口大学、そして抄訳(象牙集の中から25篇)にて福永武彦訳を読み終える。ここでは敢えてその詩訳の比較はしない。ボードレールは変貌していくパリのなかでも変わらぬ老婆や乞食娘、盲人や寡婦などのなかにその美を感じとる。それは変わりゆく大都会のなかで共に生きる詩人の孤独な深淵の魂の鏡でもある。パリが、群衆が詩人に与えたものは、この孤独の観念であり、悪の華はボードレールの世界そのものの表象である。併読しているベンヤミンのパリ論と読み重ねても興味深いものがある。2016/08/23
ラウリスタ~
11
こういった形でボードレールの詩をまとめて読むのは初めて。翻訳でもその面白さが十分に伝わるのがボードレールのいいところか。ほぼすべての詩に簡潔で要を得た注がついているので、読みやすい。ボードレールほどに日本での研究の土壌が深い作家だと、その注は19世紀文学全体を理解する上でも非常に有効なものになる。2015/10/09
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