出版社内容情報
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内容説明
百年戦争とそれに続く薔薇戦争により疲弊したイングランドで、歴史に翻弄される王ヘンリー六世と王を取り巻く人々を描く長編史劇三部作。敵国フランスを救う魔女ジャンヌ・ダルク、謀略に次ぐ謀略、幾度とない敵味方の寝返り、王妃の不貞―王位をめぐる戦いで、策略に満ちた人々は悪事かぎりをつくし、王侯貴族から庶民までが血で血を洗う骨肉の争いを繰り広げる。
著者等紹介
シェイクスピア,W.[シェイクスピア,W.][Shakespeare,William]
1564‐1616。イギリスの劇作家・詩人。悲劇喜劇史劇をふくむ36編の脚本と154編からなる14行詩(ソネット)を書いた。その作品の言語的豊かさ、演劇的世界観・人間像は現代においてもなお、魅力を放ち続けている
松岡和子[マツオカカズコ]
1942年、旧満州新京生まれ。東京女子大学英文科卒業。東京大学大学院修士課程修了。翻訳家・演劇評論家(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ケイ
133
ファム・ファタールはフランスにあり。ヘンリー五世の妻はフランス貴族。5世が亡くなった後、イギリスの跡継ぎ、のちのヘンリー七世をオーウェン・テューダーとの間に成した。六世治世時のフランスとの戦争では、ジャンヌ・ダルクが英国軍を悩ます。英国を鼓舞する英雄トールボットは、彼女のいるフランス軍に破れる。講和の際、フランス貴族の娘が六世と結婚する。六世からエドワード四世が王冠を奪うと、六世のフランス妻が兵を率いて戦う。エドワードがフランス王の娘を妻としなかったことでフランスは攻めてくる。女つよし。2022/04/04
ケイ
128
解説によるとシェイクスピアはこの三部作で世に出たらしい。登場人物など細かい史実との違いは気にせず楽しむものだろうが、実際の巻末の系図はありがたい。赤薔薇派と白薔薇派がよくわかる。第一部でジャンヌ・ダルクと対峙して活躍する英雄トールボットの最期は、道明寺の戦いの際の後藤又兵衛や真田幸村に重なった。リチャード二世やヘンリー六世をみると、叔父たちによる摂政政治は凄まじい謀略を生み出すのだと感じる。エドワード四世の頼りなさと、のちのリチャード三世の残忍さと頭の巡りの良さの対比が劇を盛り上げる。2022/01/08
KAZOO
106
ヘンリー六世の全三部を1冊に収めたもので、百年戦争や家系図などが頭に入っていないと理解するのに大変だと思います。この本ではそういった面で工夫をされていて、注釈などもわかりやすくするための工夫もされています。私は、このような長いときには、配役が誰であったのかをまず頭に入れてその俳優の顔を思い浮かべながら読むことにしています。そうすると興味も持てるし、忘れない気がします。それにしてもシェイクスピアが若い頃にこれを書いたということ自体驚きです。2015/09/29
優希
52
孤立していくヘンリー六世に哀れさを感じます。百年戦争、薔薇戦争と戦争が続き、繰り返される権力争いが恐ろしく見えました。ヘンリー六世が平和を望もうともその望みは叶うことがありません。謀略に次ぐ謀略、幾度となく敵味方の寝返りが起きるのが目まぐるしかったです。血が流れ続けても美しい絵になるのが不思議なところでした。徐々に潰れる平和への願い、王妃の不貞。王位をめぐり、血で血を洗う骨肉の争いは後の『リチャード三世』にも受け継がれていく原型になっているのでしょう。女性の活躍が意外と目立つ作品でもありました。2014/11/01
絹恵
51
何度も何度も裏切り裏切られ、欺きの上にある王位に、遣り切れない気持ちでいっぱいになりました。それでも争うことを止められないその魂の在り様は、欲望という牢獄に囚われているようでした。完璧な平和はないのかもしれないけれど、争うことよりも平和を選び取ることに、王としてではなく、ひとりの人としての信念がありました。それがたとえ深い孤独を落としても。2015/10/23