感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
おーすが
12
この世には人知を超えたものがある。人間はどんなにがんばってもその表象しか理解することができない。その無情さが心地よい不思議。「すりかえられた肉体」はよくあるSFホラー。こないだRCWの短編集に似たのがあったなあ。淡々と絶望を生きる「未来をのぞく男」がお気に入り。「とかげ」も似た話。時間の概念のバリエーションが楽しめる。2020/07/29
とんかつラバー
9
「糞神島」はタイトルからしてインパクトのある作品だが、水木サンが南方に行った時、土人の女性は宣教師によって胸を隠す布をつけるようにされていた。それまで自然と共に自由に暮らしていた人々に「文化」を押し付ける無粋さを描いている。うんこまみれの絵面は強烈で嫌悪感を覚えるが、文化的な暮らしをするようになった人間への強い皮肉も含めている。そして天国のような南方へ侵略を行った日本軍への強い批判もこめられている。2023/12/19
とんかつラバー
9
氏の作品の中でもこの世から奇妙な世界に人間が迷い込む作品を収録。「迷路」は悲壮な話なのに餓鬼とのやりとりがコミカルに描かれる。「コロポックルの枕」も人間が鬼に食われるえげつないシーンもシュールに描かれている。いかにも氏の持ち味らしい。「糞神島」は糞を神と崇める野蛮な島に文明をもたらそうとしたインテリ教師の末路を描く。皮肉や風刺が効きすぎててもはやなんだか分からなかったがとにかくインパクトがすごい。2022/04/04
ほし
3
最近の漫画はなかなか興味がわかないのか絵があっさりしすぎているのか気持ちが違うほうに行ってしまって1分と読んでいられない。やっぱりインパクトと特に無常さがこれくらいでないと、と思う。2018/04/28
ほわ
2
今回も内容の濃い1冊でした。迷路、天井裏のクモ、虹の国アガルタ、コロボックルの枕あたりは好きだなぁ。中でもコロボックルの枕は考えさせられた。「地獄とは人類最後の記憶ではなかろうか。幾世代を経てもわれわれの心の奥の無意識の世界に焼きついているのだ。」地球の生まれる前もあり、これからもまた無限にある時の長さや広さを存分に感じられる作品だった。2022/05/28
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- 和書
- 権力論 岩波現代文庫