ちくま文庫<br> マーティン・チャズルウィット〈上〉

ちくま文庫
マーティン・チャズルウィット〈上〉

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  • サイズ 文庫判/ページ数 621p/高さ 15cm
  • 商品コード 9784480027702
  • NDC分類 933
  • Cコード C0197

内容説明

「だれもみな自己のことばかり。わしのことを考えてくれる者は誰一人いない」とマーティン老人はいう。しかし彼とて利己心の塊なのだ。ペックスニフは偽善者、保険金目当てに父を毒殺しようとする息子などチャズルウィット一族はみな筋金入りの利己主義者だ。これらがぶつかり合ってのさぎ、ぺてんの数々。一族をめぐる出来事を通してイギリス社会に遍在した利己心に筆を向けた、デイケンズの問題作。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

ケイ

98
読み出したらとまらない。ひたすらページをめくるだけ。多大な財産を持つマーティン爺の、持ちすぎるゆえの人嫌い。立派な人物に見えるペックスニフ氏。彼の弟子で、純真なトム・ピンチ。彼の下を飛び出したウェストロック。そしてマーティン孫。みんな好い人に見えるのだが、何かが掛け違えているだろうか。人間関係がギシギシしているようだ。急いで中巻へ。舞台はアメリカかな。2015/12/14

のっち♬

94
祖父の養女との婚約が原因で不仲になった主人公は自活のために親戚の建築士の元へ赴くが祖父の差金で追い出される。「利己心」が蔓延して身内の死を切望する者すらいる強欲な一族の物語で、お金の操り人形と化した序盤のやりとりは冗長で面白味に欠ける。そんな一族に囲まれて猜疑心の塊になったマーティン老人と疑うことを全く知らない建築士の助手トムは真逆の人間といえるが、著者は利己的な主人公も含めて彼ら全員を問題視している。見たい現実しか見ようとしないというこの視野の偏りも、本作のテーマである「利己心」に含まれているのだろう。2018/03/10

kasim

36
人間不信の富豪とその遺産を狙う人々。祖父である富豪に勘当されアメリカを目指す主人公マーティンさえ、一見普通の好青年だが実は傲慢で自己中心的だ。超善良なトム・ピンチもいいけれど、有能で機転が利くのに、苦労の中でこそ陽気さに名誉がある、という変な人生哲学で好き好んでマーティンに仕えるマーク・タップリーが私のお気に入り。アニミズム溢れるややこしくも可笑しな描写も脂ののったディケンズという感じ。長らく絶版なのがもったいない。中巻へ。2021/07/22

ゆーかり

19
ディケンズ長編6作目。1842年のアメリカ旅行後に書かれた作品。利己心がテーマ。大金持ちのチャズルウィット老人は皆お金目当てと思い誰も信用できない。孫のマーティン(祖父と同名)、親戚たち、善人過ぎるトム・ピンチ。偽善者と言われるペックスニフはそうは悪者にも見えない。ディケンズには珍しく主人公が今の所いけ好かない俺様タイプ。渡米後どうなる?月刊分冊開始数か月後に急に売れ行きの大幅低下が起こったため主人公をアメリカへ移住させることを決意し売れ行きは向上したので効果があったらしい。[ガーディアン必読1000]2018/01/19

秋良

15
利己的なチャズルウィット一族とヴィクトリア朝時代のイギリスが主人公。ディケンズは後期作品の方が読みやすいので始めは進まず。小マーティンが大マーティンと仲違いして、アメリカに渡ってから段々エンジンがかかってきた。そしたらやっぱりアメリカ編か始まってから当時も人気が出てきたらしい。ハリウッド映画に美女ヒロインが必要なように、イギリス文学には有能でユーモアを備えた執事が必要という解説に納得。陽気な執事タップリー君の描写に作者の愛を感じる。2022/01/23

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